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九十九昴がBARに戻ってきたのは、日付けが変わるぎりぎりの時刻だった。
もともと別の仕事で外に出ていたため、調査の開始が遅れたとのこと。
井端甫 -イバ ハジメ-
2月10日生
8代続く茶道の家元
1年前一家全焼
両親、姉は死亡
甫も全治8ヶ月の大火傷をおう
幸い顔は軽傷
家にいた唯一の使用人も火傷を負うも軽傷
甫と同じ病院へ搬送の後行方が分からなくなっている。
「火事の原因は?」
藤城悠の問いに九十九昴は一枚の写真を取り出した。そこには黒い骨組みだけが無惨に残る、井端家の屋敷が写っている。
「放火だよ。誰かが屋敷に火を放ったんだ。まだ犯人も捕まっていない。警察は、手がかりすらつかめていないそうだ。」
九十九昴は人の不幸をまるで自らの事であるかのように語り、悲痛に顔を歪めた。
「昴。あの男の依頼を受けるかどうかは、お前に任せる。」
「…受けるよ。失う事の辛さは、よくわかるからさ。」
即答だった。きっと井端甫の事を調べている時点で決めていたのだろう。
俯く九十九昴へと手を伸ばし、そっと抱きしめた藤城悠は、彼の唇を塞いだ。それは濃厚で、優しく、愛に満ちていた。
いつの間にか忘れられてしまった有村春一は一つ咳払いをすると、その場を後にした。
「全く。場をわきまえろってんだ。客が来たらどうするつもりなんだか。」
「客が来たら丁度いい。こいつが俺のもんだって事を見せつけてやるだけさ。奴らの中には、昴に色目を使う奴が多いからな。」
自分のすぐ後ろから聞こえた返答に驚いて振り返る。あろうことか、そこには先程九十九昴と濃厚なキスをしていた藤城悠が立っていた。
彼らは意外とあっさりしている。行為が熱く濃厚でも、あとを引くことがない。
しかし、彼らがお互いに互いを必要としているということを、長く一緒にいる有村春一は誰よりもわかっていた。
彼らはすでに互いしか残っていないのだ…
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