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九十九昴は、藤堂雪-トウドウ セツ-の元を訪れた。
藤堂雪は、裏では名の知れた鑑定屋である。
代筆などの横行する裏稼業では、それを鑑定する鑑定屋がいるものだ。
藤堂雪は、代筆屋と称し仕事を受けている者の筆跡を全て把握している。
「雪。昴だよー。頼みたい事があるんだけど…」
九十九昴が古びた建物の中に入って行くと、そこには床で眠る藤堂雪の姿があった。
ーまたか…
「雪!!またこんなところで寝て!!起きろ!!」
九十九昴の怒鳴り声に藤堂雪は弾かれたように飛び起きた。
頭を掻いて、辺りを見回す姿はまるで猫のようだ。
「やぁ、昴。もう朝かい?」
「朝じゃない。夜の7時半だよ。今度またこんなことしたら、晃さんに言っちゃうからね!!」
兵藤晃-ヒョウドウ アキラ-。
兵藤組の若頭。
系列の組のゴタゴタを解決する際に、雪に鑑定を依頼し、それから兵藤晃は藤堂雪にぞっこんである。
藤堂雪の天然さを危うく感じた兵藤晃は、藤堂雪を囲おうとしているらしい。
「頼むよ、昴。それだけはやめてくれ。晃さんのところで囲われるってことは、君は僕に会うためにわざわざ兵藤組の屋敷に行かなきゃならないって事なんだ。君に会えなくなるのは悲しい。」
九十九昴は呆れたように笑うと、井端甫から預かった手紙を藤堂雪に手渡した。
「この手紙の筆跡鑑定をお願いしたいんだ。お代は、今回のことを晃さんに言わないってことでいいよね?」
九十九昴の肯定しか受け付けないと貼り付けたような笑顔に、藤堂雪は、しぶしぶ手紙を受け取った。
ー昴は、こういうところが無ければ優しくていい子なのに…
心の中でそっと目の前の美しい男の短所を指摘した。しかし、それはある一方から見れば美点でもある。彼に短所などあるのだろうか。
「ちょっと待ってね…
…なんだ〜。これ書いたの羽生-ハブ-さんじゃん!でも珍しいね、羽生さんはなかなか自分の筆跡残さないのに。」
羽生-ハブ-は、代筆屋の通り名。
彼女は、自分の筆跡を残さない事で有名だ。
幾つかいる代筆屋の中でも一、二を争うほどの腕前だ。
「羽生ね…ありがとう。今回のことは晃さんには言わないでおいてあげる。雪に会えなくなるのは嫌だしさ。」
そう言って藤堂雪から手紙を受け取った。
「もう遅いし、悠さん呼ぶからここで待ってなよ。」
「平気だよ。心配してくれてありがとう。
これでも男だよ、もし何かあれば自分でなんとかできるから。」
そう言って、心配する藤堂雪を残して建物を後にした。
ー彼の短所は、自分がどれだけ綺麗か分かっていないことだね。…悠さんに連絡した方がよさそうだ。
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