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「篤志…。」
そこにはいない筈の、しかし愛しく、今一番会いたいと望む人物が目の前にいた。
「甫…様……。」
向田篤志以外の2人は、有村春一からの連絡により彼がここへ来ることを知っていていた為驚くことは無かったが、何も知らない向田篤志は驚き、数秒間動く事ができなかった。
「なぜ、ここに?」
「彼に連れてきて貰ったんだ。…………貴方の、本心が知りたくて。」
「私は、貴方の人生を狂わせてしまった元凶ですよ。こんな私に…………。」
自分を卑下する向田篤志の言葉にかぶるように井端甫は言葉を発した。
「会いたかった。寂しかった。辛かった。
……貴方が消えてしまって、捨てられたと思った。
手紙の相手が貴方ではないかと薄々気付いていた。
でも、確信を持てなかった。
僕が…………貴方を好きだから、愛してしまっていたから、都合のいいように解釈しているだけかもしれない。
だから忘れようと思った…………。
…………相手が貴方だと聞いた時、すごく嬉しかった。
貴方の本心が知りたいと思った。」
「甫様…。」
「勝手に聞いてごめん……。でも、さっきの言葉…すごく嬉しかった。涙が…出る程、嬉しかった。貴方の本心が聞けてよかった。
…ずっと伝えたかったんだ。手紙では一度も言えなかったから……………、
貴方のことを、愛しています。」
井端甫は涙を流しながら悲しげに微笑んだ。
そして、美しい指輪を差し出した。
死ぬ気だと、ここで引きとめねば二度と会えないと、本能が訴える。
「すまない。辛い思いをさせて、一人にして、自分勝手で、貴方の元から消えたのは、俺の単なる自己満足に過ぎなかった。
俺がそばに居ると貴方を傷つけてしまうと思った。まさか自分が逃げたせいで貴方を追い詰める結果になるなんて考えもしなかった。
愛している。忘れたことなんて、一度もなかった。考えるのは貴方の事ばかりで、こんなに人を好きになったのは生まれて初めてだ。
貴方が笑っているだけで俺は幸せになれるんだ。だから…だから、死ぬなんて考えるな??
俺と…生きてくれ…甫。」
向田篤志に強く抱きしめられた井端甫は涙の溜まった瞳を強く瞑り、向田篤志の胸に顔を埋めた。
「あの〜、お取り込み中申し訳ないんだけど、俺たちの事忘れてません?」
九十九昴の控えめな仲裁に、ずっと我慢していた有村春一が怒号をあげた。
「生ぬるい‼︎
俺たちの事を忘れて勝手に進めんな‼︎甘ったるい事ばっかりいいやがって、胸焼けするわ‼︎胃がキリキリする‼︎
…ったく、大変なのはこれからだ。」
怒鳴られ、驚いた2人は一瞬離れたものの、有村春一の形相に怯えた井端甫は再度、向田篤志にひっつく事となった。
「場所を変えようか。ここからの話は、ここではしにくい…」
藤城悠の言葉にそこに居た全員が頷いた。
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