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教室に入ってきた実くんが、近づいてくる。
実「雪、どうたしたんだよ。どこか痛むのか。こんなに泣いて…。」
雪「実くん。」
胸元にしがみついて、声をあげて泣いた。
もう、ダメだ。この恋はやっぱり叶わない。
わかっていたんだ。でも…。
いきなり泣き出した僕を実くんはぎゅっと抱きしめ、ずっと背中を撫でてくれた。
雪「ぐす…。ごめっ…急に泣いて。」
ぐずぐずと鼻をすすり、まだ流れてる涙を拭う。
実「…。」
しがみついていた手を離しそうとする。
ぎゅっと更に強い力で抱き締められる。
実「…雪、俺じゃダメ?」
シン…と静かになる。
雪「え…実くん、なに言って…。」
実「俺ずっと雪が好きだった。入学式で見てからずっと気になってて。でも話かけられなくて。夏休みに話せたときは本当に嬉しかった。」
なに。なに言ってるの。
実くんが僕を好き…。そんなこと考えたことなかった。頭の中はパニックで、なにも反応できない。
実「俺、最近の雪が誰を見てるか知ってる。前は見てなかったのに…。取られるかもしれないって怖くて堪らなかった。お願い、俺と付き合って。誰にも渡したくないんだ。」
震える声に戸惑う。
僕は皇先輩が好き。それは実くんも分かってる。
でも、この強い手を振りほどけない。
何がなんだか、わからない。考えられない。
雪「…考えさせて。今、混乱して…。」
実「…分かってる。こんなときに急にごめん。我慢できなかったんだ。好きだよ、雪。」
更に強くぎゅっと抱きしめて、腕が緩んだ。
僕は実くんを見るだけで、立つこともできない。
じっと見ていた実くんの顔が近い。
唇に温かく、柔らかい感触がした。
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