アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
77.
-
はぁーーーと大きなため息をついて、実くんの顔があがる。
実「………やっぱ、ダメだったかー。行動しなかった俺のせいもあるけど。」
雪「………実くん。」
僕の近くまで歩いてくる。
実「俺は…本当に雪が好きだ。でも、笑ってる雪が好き。本当はわかってたんだ。でも、もしかしたらって思うと我慢できなくて…。」
片眉を下げて、困り顔の実くんが両手で僕の涙を拭う。 目線が絡む。
実「一生懸命考えてくれて、ありがとう。困らせてごめんな?…すぐには忘れられないけど…落ち着いたら今度こそ友達になってくれる?…それまでは好きでいさせて。」
言葉がでない。
うん、うんって首を縦に振るしかできない。
本当に優しい人。ごめんなさい。ありがとう。
実「応援はできないけど…雪も前に進めるといいな。」
暁色の空の下、悲しそうに笑うその顔に、がんばって笑顔を返す。きっとできてなかっただろう。
笑って過ごすことが、実くんの気持ちに返せる唯一のことだ。
両手を添えられたまま、顔が近づいて、唇に柔らかい感触。
びっくりして、目を見開く。
ニヤリとした実くん。
実「ごちそうさま。………また、な。」
そのまますっと離れた。
僕は怒ろうとして、その言葉に固まる。
雪「…うん。…またね。」
さよなら、じゃなかった。
また…。いつか、そんな日がくるといいな。
遠ざかる背中に願いをのせて、見送る。
このとき、見ていた人がいるなんて知らなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
78 / 393