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ハル
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「春ってどうだい?」
「は、る・・・ですか」
「春は暖かくてほっこりとした季節なんじゃよ、お前さんにぴったりじゃな
笑えばもっとぴったりじゃ」
笑顔が上手なおじいさんだった。
俺の心が弾むような笑顔。
大好きな笑顔。
ハル、
今は漢字が思い出せなくてカタカナにしているが、その時確かに名前をもらった。そして嬉しかったはずだ。
俺は長い期間生きてきた、その中でも名前をつけてくれたのはあのおじいさんしかいなかった。
他の人間は、俺が名前はないと言うと、「じゃあ宇宙人でいいか」
となる。そこから観察していく日々が辛かったように思う。
奏汰に
「最近少し表情豊かになってきたんじゃないか?」
と言われた。
今まで何千億人もの観察をしてきてこんな事を言われたのは初めてだった。
あのおじいさんは、色々教えてもらう前に死んでしまった。すごく優しいおじいさんだった。大好きだった。初めて家族の暖かさというものを教えてくれた唯一の人だった。
「ハル」
奏汰に名前を呼ばれるのと他の人間に宇宙人と呼ばれるのとでは違いがありすぎる。
俺が求めていたのは、名前をくれたり、暖かさを教えてくれるおじいさんみたいな人。そして
優しさを教えてくれたり、俺をしっかり見てくれる
奏汰しかいない。
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