アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
春
-
「奏汰、漢字でハルはどう書くの」
宇宙人が人間に観察以外で関わることは禁止とされていない。
だから、色々教えてくれそうな奏汰に教えてもらいたい。
「どのハル?いっぱいあるけど」
「暖かくてほっこりとした季節のハル」
「あぁ、春ね」
奏汰はソファから立ち上がりペンとメモ帳を持ってきて何かを書き始めた。
「これが春」
「は、る・・・春」
じっとそのメモ帳を見つめる俺に奏汰は何も言わず見ていてくれた。
何かを話してくれるんじゃないかって期待しているのかもしれないと思った。
そう思っていたとしても思っていないとしても、俺は話さなきゃいけない気がした。
「奏汰、今話してもいい?」
「ああ、いいよ」
奏汰は俺の方にからだを向け真剣に話を聞く姿勢をとる。
奏汰に会ってから1ヵ月、なんでも話していい気がする。自分がそう思ったんだからそれを貫き通す他ない。
伝えたかったこと、聞きたいこと、それらを全てぶつけるように話し始める。
「あのね、俺には元々名前がなかったんだ。宇宙人っていう固定された名前しかなかった。
けど、前に俺が観察していて、もう死んじゃったおじいさんが俺に名前をくれたの、春、暖かくてほっこりとした季節、そうやって名前をくれた時初めて嬉しいと思った。
なんかね、そのおじいさん俺が笑ったら春っていう名前もっとピッタリになるって言ってくれたの。その時抱いた感情がなんだったかわかんない。けど目がすごい熱くなった。これはなんていうの?奏汰」
奏汰はじっと待っててくれた。俺が話し終わるまで、気が済むまで。
「それは、嬉しかったんじゃないかな
多分涙が出そうになったんだと思うよ」
奏汰は教えてくれた。1つまた1つとわかっていくことが増える。
それが嬉しいように思う。
「宇宙人も涙を流せるの?」
また問う。
「流せるよ、絶対。最近はハルの表情が少し豊かになってきたし気持ちも沢山動いたりしてるみたいだし」
「そっか」
奏汰は少し考えた後俺に目を向ける。
「ハルはそのおじいさんにこの春って漢字で名前つけてもらったってこと?」
「うん」
「じゃあ漢字の方がいいねカタカナよりも、漢字の方が色んな意味が詰まっているし多分おじいさんもそっちの方が喜ぶと思う。」
奏汰の真剣な表情と輝く目に嘘はない気がした。
嘘をついているかついていないかは俺が脳を見ればすぐわかること、だけど、奏汰は特別で何かがあって正面から向き合いたいと思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 71