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初めての
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一回転するジェットコースターに乗りたいと、野原が切り出したので皆で長い列に並んでいた。
奏夜
「なんだこの列は。これが庶民というものなのか」
瀬戸川先輩にとっても、庶民がくる遊園地は『初めて』だったらしいので、かなり興奮していた。
待っている間、イチャイチャしたり、庶民の素晴らしさについて語り合ったりしていた。
そんな中、優人は一人浮かない顔をしていた。
奏夜
「どうした山崎」
優人
「いや俺、小さい頃ジェットコースター乗って眼鏡落ちて壊れた事あるんですよ。だから今回もまた落ちないか不安で」
奏夜
「眼鏡を取ればいいじゃないか」
優人
「俺、視力悪いんで眼鏡かけてないと綺麗な景色とかあんまり見れないんですよ」
皆と同じ景色が見たい。一人だけぼやけた景色だなんてつまらなすぎる。
そんな事を考えている内に、順番が回ってきた。
「お客様、当アトラクションでは眼鏡を外しての乗車となります」
あ、はいとだけ言って優人は眼鏡を外した。
やはり視界はぼやけたままだった。
「ベルトはちゃんとかけましたか!それでは皆様、一回転ジェットコースターをお楽しみください!!」
だんだんと加速するジェットコースターに、優人は目をつぶったままでいた。
体が浮いたような感覚に囚われ、捕まっていたレバーにさらに力を込めた。
その様子を見ていた、隣の席の奏夜は、優人に
奏夜
「山崎。目を開けてみろ」
そう言葉をかけた。
ゆっくりと目を開ける優人。
そこに見えたのは青く澄んだ空と、綺麗に飾られたイルミネーションとアトラクションの景色だった。
視界がぼやけていたが、そんなの関係無かった。いや、むしろぼやけていた方が綺麗だと言うべきか。
まだ夜ではなかったため光はついていなかったが、色が配色されていたためその光景が目に焼き付いていた。
優人
「…綺麗……」
不意に出たその言葉に瀬戸川先輩は
奏夜
「だろ」
にかっと笑った。
小さい時もそうだった。一緒にジェットコースターをあの人と乗って─……。
久しぶりのジェットコースターはとても綺麗で、とても儚いものだった。
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