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夢の世界の真実
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優人
「交通事故の……現場?」
なぜ気づかなかったのか。いつもの優人ならば、すぐ気づけていたはずなのに。
周囲の空気に敏感であればある程、夢の中では鈍感に変わるというのか。
とりあえず、さっきの子供にこの事聞かないと。
優人
「ねぇ、ここでなにがあった……の…」
やはり夢の世界は何が起こるか分かったものではない。
……いないのだ。少年が。
先程まで会話をして、頭にも触れたはずなのに、今ではその記憶や感触でさえだんだんと薄れていく。
探そうと体を起こしても、欝になってでもいるかのように自由が効かない。
重い身体を引きずるように前へ、前へと進んでいく。
交通事故現場でなにが起こったのか。
普段の優人なら、助けを求めてそれで終わるはずなのに。
わからない。
優人自身もなぜ向かっているのかわからなくなっていた。
──なんで、足が勝手に動くんだ。
──なんで近づくにつれ思い出してしまうんだ。
もうやめてくれ……。あの人のことはもういいんだ。
頼むと何度心に願っても、足は止まらない。
ゆっくりと、現場に近づいているのが肌で感じる。
忘れたくて、ずっと心に閉まっておいたのに。
次第に優人の視界は、揺らぎ始めた。…ゆらゆらと夢の世界は……捻れ始めた。
…おいで、と声がする。手を伸ばせば届くのに。すぐ近くにいるのは分かっているのに。
見つめることも、触ることも。ましては喋りかけることも出来ない。
「また会えるよ。ぜったいに」
そう言って、俺の頬をゆっくりと触った。
その白い手は、懐かしくて。
儚くて。
美しかった。
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