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平凡な毎日
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薄暗い部屋の中で白いジャケットを身にまとい、学校の勲章が描かれたボタンを一つ一つ閉めていく。
制服を身にまとうだけで眠気が吹っ飛んでいく気がした。
朝の光が室内に射し込み、少し歪んだ四角形を床に描いている。大きすぎる部屋にはまだ慣れない。
カーペットの上で、スヤスヤと心地良さそうに寝ている猫を軽く撫で寝室を出た。
小さなあくびをしながらテーブルに置かれた眼鏡をかける。
タンスの上に置いてある時計は7時50分ぴったりを示しながら秒針の針が時を刻んでいく。
優人
「もうそろそろか……」
呟いた言葉は小さなこだまとなって自分の耳に入ってきた。
……本当、普通の声だよな俺。もう少しかっこいい声でも良かったんだけど。
深いため息をしていたとき、コンコンと音がした。
急ぎ足で玄関へ向かい茶色の扉をゆっくり開けた。扉の隙間から眩しい春の光が優人の髪を照らす。
玄関から出ると、軽快な日光を全身に浴びる。
太陽の光に目を細めると、大丈夫かと聞きながら優人に被さるように前に出た。
優人とは正反対の日本人離れした顔立ちに、色素の薄い茶色の髪をもった高貴な男子生徒。
同学年とは思えない美形の容姿の持ち主。まるで童話に出てくる白馬の王子様のようだ。
憎たらしいぐらい綺麗な顔してんなー。見てて全く飽きないわ。
優人
「おはよう隼人」
隼人
「おはよう優人」
にこりと微笑んだ隼人に、優人は無意識に眉間に皺を寄せた。
優人
「なんでそんな綺麗な顔してんのか不思議だよ俺は」
隼人
「ふふっ、ありがとう。でも優人も綺麗な顔してると思うよ」
優人
「説得力ねーよ」
そんな他愛のない話をする隼人は俺の数少ない友達の一人。
東雲 隼人。大手企業会社である東雲財閥のご長男様。
成績優秀、容姿端麗。勿論、運動神経も抜群。
東雲の名を聞いて知らないという者はいないとまでも言われている。
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学園正門にて、大軍の男子生徒が列を作りながら東雲隼人の登校を待ち望んでいた。
隼人
「いつもごめんね優人、一緒に行けなくて……」
今にも泣き出しそうな声で、俺を見つめてきた。
毎日のことに慣れた俺はいつも通り、
優人
「イケメンは大変だな」
と返した。
東雲隼人が門をくぐれば周りは人でいっぱいになった。
手作りのクッキーやプレゼントを渡している人、少しでも隼人に触れようとする人、色々な人が隼人を囲む。
いつ見ても、凄い人だかりだな。
隼人
「いつもありがとう。凄く嬉しいよ」
先ほどとはまるで別人のように、優しい笑みでプレゼントをすべて受け取っていく。
隼人が校内に入れることが確認できたら、俺は高くそびえたつ門を一人でくぐる。
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