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結side
それから、春亜のお父さんが帰ってきて夜ご飯を食べた。
みんなで食卓を囲んで、なんだか不思議でならなかった。
俺は家族で、ご飯を食べるなんて習慣はなかった。
でもこれが、『普通』なのだろう。
俺にもこれが、これから『普通』となっていくのだ。
俺が病み上がりだからと、春亜のお母さんが気を使ってくれて今日は鍋だった。
食卓の真ん中に置かれた鍋にはたくさんの野菜や肉が入っていて、湯気が上がり、美味しそうなグツグツと煮える音がなっていた。
『結、皿貸して。とってやるよ』
春亜が白菜やネギを、食べやすいサイズのものをわざわざ選んで少しだけ入れてくれた。
『はい、まずはこんだけ。食べれるか?』
「…うん、食べてみる、、。」
『無理そうなら、すぐに言って。無理して食べる必要ないから。』
俺らのやりとりを、不思議に思ったのか妹の桜ちゃんが結くん、ご飯食べたくないの?って俺に尋ねる。
なんて言えばいいのか分からず、言葉を詰まらせていると春亜が、
『桜はいいから、食べとけって。あと結は食べたくないんじゃなくて、食べたくても食べらんないの。』
と、言った。
これ、やっぱり食べなきゃダメだよね…
今更になって、怖くなってしまった。
どうしよう。食べられるか分かんない。
吐いてしまったら
気持ち悪くなったら
どうしよう
怒らしてしまう
怒らせたら、殴られるかも
約一週間ぶりの食事
それまでもあまり食事は取らない方だったけど、食べる時は食べていた。
けど病院は本当にお腹が空いてなかったから、食べなかったし食べられなかった。
それに、あの時はご飯なんて食べている場合じゃなかった。無理矢理、食べても吐いてしまっていた。
なんだか、食べるのが、怖い
また吐いちゃうかも
どうやって食べれば、いいのか分からない。
情けない。
情けなくて、
目の前が滲んで、目の前に置かれたご飯がぼやけた
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