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イケメン教師、取り残される
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旧部室棟に、静寂が戻った。
「ぼくも、帰ります」
宮本も、服を着て、帰りかかった。
「待ってくれ」
小坂は、宮本の足に追いすがった。
「帰らないでくれ。僕を捨てないでくれ」
宮本は、振り返って小坂を見おろした。
「え? ぼく、先生を捨てるなんて言ってないですよ」
宮本は、意外そうな顔で答えた。相手の言葉を意外だと受け取ったのは、小坂の方こそだった。小坂は宮本の思いがけない言葉に救われる思いですがった。
「ほんとうか? それは、ほんとうなのか?」
「え……、だって、ぼくのこと振ったのは、先生の方じゃないですか」
宮本は、悲しそうに微笑んだ。
「さっき、言ったでしょ。ぼく、先生のこと、好きですから」
宮本の微笑みが慈悲のように感じられた。
「村田君……とかと……エッチなことしてるのは、おどされてるからでしょう?」
宮本は悲しそうな顔をした。
「ぼくも、同じですから」
小坂が何か言おうとすることばを聞くまいとするかのように、
「じゃあ、さよなら」
と宮本は踵を返した。
いや、自分は違う。おどされているからじゃない。宮本のように無垢じゃない。
「待って」
小坂は追いすがった。助けの綱が切られてしまうように感じた。
「すみません。また今度にしていただけませんか? 生徒協議委員会の仕事があるので」
宮本の声は冷たく聞こえた。だが当然だ。宮本は正しい。しつこく食い下がっているのは、自分の方なのだ。
扉の閉まる音がした。
小坂は一人、取り残された。忌まわしい旧部室棟に。そこは過去の記憶の牢獄だった。
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