アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
【第五章 動きだす生徒たち 】イケメン教師、先生たちに弾劾される
-
ドアノブに手をかけたとき、ドア板の裏側からノック音が聞こえた。
小坂は、ドアノブにかけた手を、引っこめた。数歩さがって、校長の顔をうかがった。
校長は、そ知らぬ顔で、「どうぞ」と言った。
ドアが開き、生徒が立っていた。
三年の生徒会長と、風紀委員長。そして、二人の後ろに、なぜか宮本がいた。
「入りたまえ」
と校長がうながした。
三人は、室内に入り、ドアを閉めた。
三年の生徒会長が、校長の前に歩を進め、
「生徒協議委員会の決議事項の報告書を、提出しに参りました」
と直立不動で宣言した。
校長は、
「なんだね、わざわざ。君、そういうものは、生徒会の顧問に渡しなさい」
と、うるさそうに言った。
生徒会長は、臆さなかった。
「直訴に参りました」
A4用紙にまとめられた書類を、校長に、つきつけた。
校長は、しぶしぶ受け取った。
ページを二、三枚めくって、校長の顔色が変わった。
校長は、態度をあらためて、
「座りなさい」
と、三人をうながした。
「失礼します」
生徒たちは、律儀に礼をして、ソファにかけた。
「どういうことだね?」
校長が生徒たちの向かい側に座って聞いた。生徒会長が答えた。
「我々生徒会は、学校周辺にある好ましくない店の撤退を希望します。具体的に言うと……」
「いや、言わなくてよろしい」
校長は、ページをめくった。
「ここに、書いてある通りだね。ふむ。それについては、私も常々、問題に思っている」
校長は顔をあげ、生徒会長の顔を見てうなずいた。
「風紀委員長より以前から提出されていた問題です」
生徒会長は、横に座っている、眼鏡の風紀委員長を手で示した。
「ふむ」
校長は、風紀委員長に向かってうなずいた。
「私も、それを問題視して、当初から対策を講じた。そのような店については、そこにいらっしゃる、小坂先生に、見回りをしてもらっている」
校長は、ソファの脇に立ったままの、小坂を振り返った。
生徒たちの、うろんげな目が、小坂にそそがれた。
「本日、その小坂先生を弾劾する意見が提出されました」
生徒会長が、校長に向き直り、宣言した。
「なんだって?」
校長は、書類を見直した。
「宮本君、どうぞ」
生徒会長が、横にいる宮本に言った。宮本は、立ち上がった。
「はい、二年二組の級長の宮本です」
宮本は明瞭な声で名乗った。宮本は、確かに顔立ちがきれいで優しげで、成績もそこそこ良かったが、級長にしては、大人しくて、控えめすぎだった。だから、宮本が、堂々とした態度で陳述しだしたのに、小坂は、度肝を抜かれた。
「僕は、次の三点について小坂先生が教育者にふさわしくない非行をしているものとして、小坂先生を弾劾します。一つ。通学途上にある風紀上好ましくない店を小坂先生が利用していること。二つ。小坂先生が、校内外において生徒及びその保護者と個人的に好ましくない関係を持っていること。三つ。小坂先生が校長室でよからぬことをしていること」
「君、証拠はあるのかね」
校長が、騰々と述べる宮本を、さえぎった。
「あります」
「ほほう。それは、今日の生徒協議委員会で発表したのかね」
校長は、笑みを浮かべながらも、鋭い目つきで宮本を見た。
「個人のプライバシーに関わることですし、名誉毀損の可能性もありますので、具体的には言っておりません」
宮本が答えた。
「具体的には、この三者で、話し合いました」
と生徒会長が説明した。
「小坂先生の名前も出していません。ある先生が非行をしているので弾劾したいと僕は意見しました」
宮本が補足した。
「なるほど。賢明だ。ありがとう」
校長が、宮本をねぎらうと、宮本は、うなずいて、座った。
「この件については、真偽のほどを、私からも、調べておこう」
校長は、一人一人の顔を見て、うなずいた。
「ちなみに、このことは、顧問の先生は、知っているのかね?」
校長が生徒会長に聞いた。
「顧問の堂先生も、三者の話し合いには、立ち会っていません。報告書も見せていません」
「わかった。ありがとう」
校長と生徒たちは立ち上がった。
「宮本君は残りたまえ」
校長が言った。
「ぼくだけですか?」
宮本が、不安げに、聞き返した。
「宮本君、一人で大丈夫か」
生徒会長が、宮本に声をかけた。
「大丈夫……です」
宮本は、生徒会長を見て答えた。
「何かあったら、僕にすぐ連絡したまえ」
生徒会長が、宮本に言った。
「わかりました。ありがとうございます」
宮本は答えていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
73 / 143