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おまえくらい。
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午前2時。
夜半の平和な静寂を、不愉快な電子音がぶち壊した。
敬吾はもぞもぞと端末を取り、予測していた表示を見て着信を受ける。
「……………あい………」
『もしもし敬吾さんっ!!?今どこーーーーー ……ーーまだ飲んでるんですか?』
「あーー………?寝てたよ………」
食らいつくような勢いと怪訝そうな声はやはり逸のものだった。
寝入り端だった敬吾は、逸の熱気についていけない。
『寝てた………?……え?どこにいるんですか?』
「おまえんち………」
『えっ』
まさか外泊したなどとは思っていないだろうが混乱していた様子の逸の声から一気に力が抜けた。
どうやらもう少し説明が必要らしく、敬吾は不機嫌そうに半身を起こして肘をつき、だらしなく髪を掻き上げる。
「おめーーーが人のベッドで寝てっからー……こっち来たんだろうが………」
『い……一緒に寝たらいいのに』
「そんなど真ん中で寝られたら俺入れねえだろうが!」
『起こしてくださいよーーー』
「起ーこーしーたっつーの!どうなってんだお前の寝起き!」
苛立ちに任せてがなりつけてやると、寝起きの悪さには自覚のある逸が素直に謝った。
起こせも退かせもしないどころか襲われそうになったことは敬吾は言わずにおく。
『じゃあ俺今からそっち行きますんで……』
「んー……」
ほとんど脊髄反射で通話を切り、その場に端末を置いて敬吾は頭を落とした。
ーーん?なぜわざわざこっちに来る必要があるんだ。
ふと思うがそこは逸である。考えるだけ無駄だ。
気持ちの良い眠気も手伝って考えるのをやめ、睡魔に従う。
自分ではかなり良く眠ったつもりだったが恐らくはほんの数分後、逸がやってきてそっと布団に潜り込んだのでまた目が覚める。
「あ、ごめんなさい……」
「んん……」
先程よりは不愉快でない目覚めに少し唸ると逸が笑った。
また眠ったところを起こしてしまわないように急いで布団に入り切り、敬吾を抱き寄せた。
なんだかんだ疑問は呈してもやはり、逸の腕の中は安心する。
もそもそと自分も収まりが良いように擦り寄って腕を回す敬吾に、逸はとろけそうに笑った。
「……目ぇ覚めたら敬吾さんいないから、心配しましたよ……」
「心配ぃ……?」
「こんな時間まで飲むのはめったにないから………」
「んーー………」
頭を撫でられながら、敬吾は耳慣れない単語に訝しげに眉根を寄せる。
ーー心配。
ーー心配、されたのか。
姉に始まり、後藤にせよ級友たちにせよ、敬吾にとって心配というのはするものだった。
両親となればさすがに……とは思うが姉のことがある以上そこまで自分に比重を割いていたとは思えないし実感したこともあまり無い。
だからどうだと思ったこともないがーーーー
(心配した、ねえ…………)
ーーこの男くらいのものだろうな。自分にそんなことを言うのは。
逸の腰元をぱふぱふと叩き、敬吾は今度こそ、気兼ねなく温かい眠りに身を委ねることにした。
おわり。
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