アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
うとうとうとして
-
「ーーあ、敬吾さん聞いてました?明日問屋さん来る時間変わったらしいですよ。2時ですって」
「……………………
……………………… …………え?」
「寝てました?」
「かも……」
敬吾さんが目を擦る。
「明日スミダさん来るの2時になったそうですよ」
「えー………昼までだぞおれ…………」
「店長に任せちゃったらどうですか?」
「またへんなもんはっちゅうされる……………」
言いながらまた頭が落ちる。
だめだな、これ。可愛すぎる。
敬吾さんは頭が良い。
単純な知識量とか学歴とかそういうことじゃなくてーー鋭いんだよな。会話のテンポとか、返しが。
その敬吾さんが……………
ふわっふわになってる…………。
「それはまあ明日考えましょ、敬吾さん寝たほうがいいですよ」
「んー……………」
「皿洗っときますから」
「いいよそれは…………、鍵………」
「合鍵でかけてポストに入れときますから」
「んーーー…………」
「はいはいおやすみなさい」
させてくれるなら、お姫様抱っこで運びたいところだけど。
目が覚めちゃうどころの騒ぎじゃなくなりそうだから、生まれたての子鹿みたいになってる敬吾さんをどうにかこうにか立たせる。
心を鬼にして。
立つだけ立つと、思いの外しっかりと敬吾さんは歩いていった。
「んやすみぃ……」
「ぶふっ、おやすみなさいー」
寝室(?)の引き戸が閉まる。
このクイズの答えだけ見たら皿洗おうかな、とテレビの音量を下げると。
どんがらがっしゃんとまあ昔話みたいな見事な大音量が。
驚いて寝室(?)の引き戸を開けると、床にぺたりと座り込んだ敬吾さんとーー散乱しまくったシャツとかタオルとか。
「け……」
ーーいや、あるよ。
眠すぎると力加減できなくなって引っ張りすぎちゃって引き出しまるまる飛び出してくるとかね。あるある。
「けーごさんっ、大丈夫ですか!?どっか打った?」
「んや……だいじょぶ………」
「うんもう寝ましょう、引っ張りますよ」
念願のお姫様抱っこ、未遂。
背中をベッドにもたれさせて、支えてやりながら膝の裏を持ち上げる。
(軽いなー……)
「んん……」
「……敬吾さん、前開けますよ」
形だけ断ってから、パーカーのファスナーを下げる。
まだ自分で動けているうちに騙し騙し腕を抜く。
そこでもう敬吾さんは落ちてしまった。がっくりと。まさしく糸が切れたように。
「ベルト抜きますよー……」
これはもう全く意味のない断り。
敬吾さんは聞いちゃいない。
ただただ、それ以上のこともそれ以下のことも決してしませんよーという、自分宛の牽制だ。
ベルトを抜いて、ジーンズのボタンだけ外しておく。
このくらいしておけばまあーー敬吾さん細いし、苦しいってことはないだろう。
しかしまあ生殺しではある。
天蓋みたいに被さったまま幸せそうな寝顔を見つめさせてもらう。きっちり焼き付けておかねば。
こんなに可愛い物が見れたんだからまあいいかーー。
「かっわいいな……ほんとに……………」
こんなこと言ったら、いつもならカミソリみたいな鋭さでうるせえって言われちゃうのに。
何度か繰り返したところでさすがに自分がバカに思えてきてやめた。
顔の横で軽く握られている手に触れると、いつもより大分温かかった。
眠りが深くなってきているんだろう……そろそろ布団かけてあげないと、寝冷えしてしまう。
「くそー……名残惜しい〜……」
裸はもちろんなんだけど、このラフな服装でだらしなくくつろいでるってのもまた違う趣が……………
うっすい腰が捻れてる辺りのシャツの皺とか、ジーンズが少しだけ下がって骨盤が出てるのとか片方だけ覗いてる鎖骨とか……………
「……………」
ーーやっぱり自分がバカに思えてきてやめた。
努めて冷静に布団を持ち上げると、思いの外大きな音がしてしまって敬吾さんが呻く。
それを掛けると、冷たかったのか重かったのかうっすら瞼が開いてしまう。
(あー……)
「……?…わい…?」
「はい。すいません……起こしちゃって」
「んや……」
言いながら敬吾さんが軽く目を擦る。
起きるつもりかなーー
「寝て下さい、俺帰るとこですから」
慌てて方便を口走ると。
襟首をひっつかまれた。
「んぐっーー」
そのまま力強くーーとは言えない頼りなさでーー引き寄せられると、唇が。
(……………ちゅうってゆった!!!!!)
「んー……………」
「け、っ敬吾さん????」
俺の襟を掴んでた手がどさっと落ちて、そのまま敬吾さんはまた目を瞑った。
寝てるのかどうかーーちょっと、分からない。
「けーごさん……」
「……………」
「………っかっわいい……………」
「……………うるせえょ…………」
遅いですよ、もう。
おわり。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 110