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7thLOVE
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端から自分が食べたいものを思い浮かべてみる。
しかし食べたい料理の作り方がわからない義樹には、自分が覚樹にお願いをしようとしているメニュー全てが作るのに手間がかかると思えて素直にリクエストができそうもない。
― まったく。お前はいつもそうな。欲が無いっつか、口がきれいっつかなんつーか……。
簡単なものしか言わないし、頼みなんかほっとんど言わないんだから食いたいものぐらい遠慮しねえで言えっての。
義樹は覚樹が言うように遠慮しているわけではない。
なのに結果として覚樹には自分が遠慮しているように見えてしまっていることが悩みの種だった。
(……どうしよう……また怒らせるのかな……)
困ったような顔をして苦笑いをしながら自分を諭すような様子で抱きしめてくれる覚樹が脳裏に浮かんでその場に立ち止まり、小さくため息をつく。
― トモの、……おバカさんめ。
また、目頭が熱い。
当の覚樹はむしろ目に入れても痛くない義樹がさらにかわいく見えてご機嫌なのだ。
それなのにわざと難しい顔をして彼を見るため、その様子が義樹には怒っているように見えてしまうのだ。
「やだなぁ……」
いつも覚樹を怒らせたり困らせている(と思いこんでいる)のに更に困らせることが義樹は嫌で、思わず小さく声に出してしまった。
さらに余計なことをいろいろ考え出したが、もう一つ苦し紛れのため息をついてなんとか泣くことだけは回避できた。
(まあいいや……、もう少し考えよう……)
再び歩き出して、準備室へと通じる廊下の角を曲がる。そしてそのまま直進。
すると、奥の部屋に言語学準備室と描かれたプレートが見えてきた。
(着いた……)
ややあって準備室に到着し、鍵を開けて中に入る。
中はカーテンも手伝って少し薄暗いが温度は心地のいいものだ。
荷物を元の位置に戻し、バッグに入れておいた携帯電話を手に取った。
(コウ疲れるだろうし、わがまま言って困らせたくないな……)
結局どれにしようか考えていたのに決まらなかった。
……ということもあるが、『覚樹が作ってくれるものならなんでも美味しいし、安心して食べられる』という結論に達して、答えを決めた。
(えーと……)
【コウがいいならずっと一緒にいてくれませんか。ご飯もコウが楽な物でいいですが、無理はしないでください。疲れて面倒ならどこかに食べに行きましょう】
スマートフォンのロックを解除してから国語の教師としてどうかと思う様な語彙力の全くないメッセージを入力する。
しかし、これがメッセージの送り主である恋人、衛藤覚樹(えとうこうき)に対する精一杯の返答。
彼と話をするときは、なぜか今でも強い緊張感に襲われる。
(いろいろ心配してくれるのは嬉しいけど……なんで、心臓ドキドキするんだろ……)
義樹にとって今や何にも変えられない優しくて文武両道な最愛の恋人は、二人の勤務先でもある私立藤崎学園高等部の体育教師でもあり一卵性双生児である彼の双子の兄であるα属性な男だ。
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