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カマイタチ
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そのことがあってから、少しずつ毎日が変わっていった。
いつもと同じはずなのに、何かがちがう。
「おはよ、東」
「…はよ」
佐倉と話していた東に声をかける。
すると、一瞬の沈黙の後思い出したように返された。
ツキンと痛む胸を無視して、佐倉の方へ手を上げかけるとサッと視線を逸らされる。
宙ぶらりんになった手を下げ、席に着く。
「あ、ゆず……」
その時俺の横をすれ違った結弦に声をかけようとしたら、結弦の肩はピクンと揺れ遠慮がちに手を振られた。
その顔は笑っているのに少しも笑っていなくて。
胸の中に何か黒い穴が空いたような感じがした。
結弦たちだけじゃない。
他の誰もが俺とすれ違い、声をかければこんな反応をする。
その原因は明らかだ。
俺と結弦を交互に好奇な視線が飛び交う。
それを結弦は奥歯を噛み締めている様はその視線から耐えているように見える。
ふと、宗介を思い出した。
宗介の刺すような目。
宗介はこれを危惧していたのか。
この目にいつも、あいつは晒されて生きてきたのか。
想像するだけで胸が苦しい。
でも、そうさせたのは俺だ。
こんな辛い思いを結弦にさせているのも俺。
しばらく考えてから、俺はカバンの中のスマホを取り出した。
そして何回か操作した後、すぐにスマホをしまいふわぁと大あくびを見せつけ大袈裟に寝息を立て始めた。
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