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波乱の予感
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そしてふと、俺は朝のオレンジ二人組を思い出した。
今朝乾燥機から取り出してきたばっかりのアラジンの衣装はまだカバンの中にある。
完全に返し忘れたことをいまさら思い至った。
朝からゴタゴタしたせいで衣装のことなど忘れてしまっていたのだ。
そういえば、と隣で何やらコピー用紙の束を見ている結弦を見る。
「…ナニ? 集中できないんだけど」
「さっきから何見てんの?」
「台本ですケド」
「台本? そうか、おまえも演劇部だっけ」
「は? え、えっ?」
「ね、それちょっと見せて」
「え、ちょ、ちょっと…」
机に寄りかかっていた結弦の腕を引っ張って自分の方へ引き寄せる。
最初はびっくりしていた結弦もだんだんこの距離に慣れたのか、特に文句は言って来ない。
それをいいことにペラペラと文字の羅列してあるセリフの数々をなんとなしに見てみると、一枚だけ空白の多いページがあった。
『登場人物』とテーマになっているページだった。
「あれ」
「え、何か?」
「このメモ書き、おまえの?」
「そうだけど…」
「このカオ先輩ってさ、あのオレンジ頭の人?」
「うん」
「じゃあこの…ハル先輩ってのは昨日の…」
いつのまにか女子たちはそれぞれのお喋りに夢中になっていた。
結弦はしばらく俺を訝しむように見ていたけど、素直に首を縦に振った。
「たしかに出てたけど、それがどうしたの」
「……なぁ」
「ナニ?」
「今日、おまえんとこ行っていいか?」
「えっ…」
「おねがい。今日だけでもいい。見学させてくれないか」
少し迷いながらもそう切り出すと、結弦は明らかに動揺した顔で言い淀んだ。
それでもと畳み掛ければ、真っ赤な顔でおずおず頷いてくれた。
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