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進むための後退(湊)
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「別れてるのに、一緒にいてもらう理由なんて
…ないでしょ?」
あぁ、そうだね。
夏希の言うとおりだ。
でもね、もう前みたく夏希の意志やら決意やら尊重しようとか
好きでも別れなきゃいけないとか
無駄なこと考えるの辞めたんだ。
「ねぇ、夏希。俺じゃダメかな。」
「…??」
「俺ね、初めてなんだ。こんなに人を好きになるの。
もう少しだけ…出来れば、ずっと。
そばにいさせてくれませんか?」
それが、俺が出した答え。
「なんて…?俺がフラれたんじゃ…」
「違う。フラれたのは俺の方。
夏希が俺のこと好きって分かってたのに
手放したりしてごめん。」
夏希の目にだんだん涙が溜まっていく。
「あと、もうひとつ。」
なみだを堪えて俯いていた夏希は、
顔を上げて上目使いがちに俺を見る。
「仕方なかったとはいえ、
あんな冷たい目向けて、『どうでもいい』なんて言って
本当に、すいませんでした…!!!」
ずっと謝りたかったこと。
頭を下げたまま、上げないことに焦ったのか
夏希は、俺の肩を何回か叩く。
「ちょっ…なんの話??」
「それは、夏希の過去の話になっちゃうし
思い出したくないだろうから、
夏希が望むまでは言わない。」
夏希が聞きたくないなら、墓場まで持っていく気だ。
夏希が苦しむ分、俺が受け止めてあげるから。
「…聞きたい。教えて。」
少し震えた声が聞こえる。
緊張してるのか、怖いのか。
「無理、してない?」
「してる!してるけど…いま聴きたい。」
「わかった。知ってる分は話す」
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