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退院(夏希)
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―シャッ
明るい。朝だ。今日で、この病院とはお別れだ。
「日和くーん、これ。秘密ね?
たまに、遊びに来てね!」
と、小さなチョコレートを2つくれたのは
入院中に仲良くなった、看護師の佐藤さん。
焦げ茶色で長い髪をひとつに束ねて、ゆるく巻いているのが
彼女のいつものスタイルだ。
可愛らしい女の子だが、オレと同じ同性愛者らしい。
それ故、仲良くなったのだ。
―カラカラカラ
「あら、夏希。早起きねぇ!
退院おめでとう。片付けはだいたい終わってるわね。
それじゃ、行きましょうか。」
「うん。」
午前9時。学校も1限目が始まった頃だろう。
両手に少し大きいかばんを持って、歩く。
自分の足で、歩く。
色んな事がたくさんあった。
湊に恋をして、付き合って
遥紀センパイのことを思い出して
怖くて、怖くてしょうがない時に支えてくれた。
オレが飛び降りても、見捨てないで抱きしめてくれた。
オレが突き放しても、それでも助けに来てくれた。
これから、少しずつ返していくよ。
少しずつでも、『ありがとう』を伝えていくよ。
愛してるよ。湊。
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