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信号機(湊)
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お母さんの車に乗せてもらって
約束のファミレスへと向かう。
「お母さん、
夏希ってどんな子だったんですか?」
ふと、そんなことを聞いてみた。
「そうね、優しくてしっかりしてて…
真面目に物事をこなそうとしても
ドジで抜けてるから、よく失敗してたわ」
「夏希らしいですね。」
「でもね、嘘が下手なのよ。」
それは、俺も知っている。
嘘をつくと、あからさまに嘘っぽくなる。
言ってることも、行動も。全部。
「あの子、いじめに遭ってたんじゃないかしら
裕翔くんの記憶が戻る前、
高校入ってすぐぐらいだったかしら?
あざ つくって帰ってきてたのよ。」
「どこに、ですか…?」
「顔にも、体にも。沢山。
いつも適当に言ってはいたけど、
嘘ってわかってたのに、聞いてあげなかった
私のせいかもね、
夏希がこんなになってるの」
「そんなこと………」
『そんなことない。』なんて、
言えなかった。
もしも、俺がお母さんの立場なら
俺も同じことを思うだろう。
それに、多分きっとそうだから。
程度は違えど、裕翔と同じ経験。
思い出すキッカケになってるかもしれない。
車が軽いブレーキ音を立てて止まる。
ファミレスが遠くに見えたその信号は
夏希の染まった腕と同じ
紅だった。
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