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愛音(あると)VSテンガロン。逃走終章~腐二次創作弱虫ペダル愛音/黒田目線
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拓とーさまのピアノすき
別れの曲がいっとうすき
ポスターみたことあるの
ピアニストだったんでしょ
どーしてうちと、正塔んとこくらいでしか弾かないの?
無理矢理弾かされそうになったの?
それはひどい!
それで青ママンとこへ?
日本にも
いられなくなった?
ひどい!
ひどすぎる!!
拓おじさん!
雪おじさん!
愛音がアメリカ大使館行った!
黒い服の奴らに中に連れて行かれた!!!
俺たちは青ざめる。
テンガロンがフランスに来てる。
外遊。
外交。
任期も後わずか。
八年の逃亡生活が、やっと終わると思った矢先…
「雪ちゃん」
「とにかく、行こう!」
テンガロン!
テンガロン!
俺たちから、あの子を、宝を奪わないでくれ!
祈るような思い。
手のひらの汗。
急ぐ。
大きな部屋。
ピアノ室?
がらんと。
ベーゼンドルファー?
アメリカ大使館なんだからスタインウェイとかおいときゃいいのに。
一人でくすっと笑ってたら、大きな両開きの扉が開いて、偉そうな大柄のおっさんが入ってきた。
ドニー・テンガロン。
もうすぐ退任のアメリカ大統領…
「こんな生き物がいたとはな」
独り言のように英語で言った。
「生き物ってのは失礼でしょう、ドニー・テンガロン」
テンガロンは眉上げた。
「英語話すのか」
私はわざと無視して続ける。
「とうさまがたに謝ってよ。音楽聞きたきゃチケット買えば良かったのよ。日本の昔の首相はオペラやえくしずじゃぱん聞きに行ったって。あんたもそうすりゃ良かったのよ」
テンガロンは黙っている。
私は続ける。
「拓とーさまはぷろなんだよ。ぷろはやたらと弾かないし弾いちゃいけないんだ。大人なのに、そんなこともわからなかったの?」
アメリカ大使館の表についたが、さて、どうすればいい。
アメリカ大使館はアメリカの領土で、俺たちは日本人。
フランス市民~シトワイヤン~ですらない。
と。
テンガロンが出てくるではないか。
しかも愛音(あると)の手を引いている。
まじか。
テンガロンは老いていた。
八年分。
それ以上。
拓斗が身を、固くする。
俺はかばうように前に立つ。
対峙。
テンガロンは口を切った。
「お嬢さんに叱られた。リサイタルがあったらチケットを買う。それなら許してくれるかな」
拓斗はピキピキに緊張したまま、それでもコクコクと頷いて見せていた。
「ピアノ弾いてあげたんだ。クシコスポスト。史上最遅クシコスポスト。ひどかったのかな。テンガロン泣き出しちゃったんだよ」
思わず抱きしめる。
八年逃げ続けた俺らより、この子は明確に結果を見せた。
かなわねえ。
「雪ちゃんの血だね」
「そかな」
「そだよ。僕は雪ちゃんに、助けられてばっかだ」
はにかむ拓斗に、俺はなんだかムラムラする。
だめだめ。
子供の前だぞ。
現に拓斗は愛音に声かけてるとこだ。
「弾いて。遅いクシコスポスト」
「こらー、その言い方ムカつくー」
言いながらも、うちのピアノの蓋を開く。
大使館にあったのより、少し格の低いベーゼンドルファー。
「やっぱたいしかんのやつのほうがものいいなー」
生意気を言いながらゆっくり弾き出す。
たどたどしい、でもあったかい音が出る。
子供は宝だな。拓斗。
うん。
雪ちゃん。
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