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『おいおい、そっち行ってまだ何日だよ……』
「……ここ、僕がいていい場所じゃない」
ついつい弱々しい声になってしまう。
『辛いのか?……それとも、怖いか?』
少し宥めるような口調で、紡は静かに問いかけてきた。
辛い?
怖い?
僕が?
「辛くない、……怖くもない。ただね、僕以外の人は血が繋がってる家族で僕は違う。それだけ」
あぁ、よく考えたらこういうことだ。
あの人達は血が繋がった本当の兄弟。生まれた頃からずっと。
でも僕は突然現れたただの他人。
だからここに居場所がない。
当たり前じゃないか。
『………………なんか色々試行錯誤してるみたいだが、お前には家族ってもんがまだわかんねーんだよ。だからそんなに悩むんだろ。……言っていいかわかんねーけど、今までがおかしかっただけなんだぞ、律』
今までが…………………………おかしかった?
何が?
「言ってる意味が全然わからない。おかしくないよ。だってアレが普通だって、"みんな"言ってたよ。……こっちがおかしいんだよ。……ねえ、どういう意味?」
そういう事、簡単に言うけどさ……説明してよ。
僕の何がおかしいの。心?身体?存在?
『…………お前、相当疲れてるな。今から行くか?無理しすぎだ』
はぐらかして、心配したふりも、しないで。
「来なくていい…………。なんか、ごめん。変な事言った。もう、切るね」
落ち着きを取り戻した自分の頭は、沸騰したみたいに熱い。
小さく呟いた。
『さっさと仕事終わらせて、できるだけ早く行くようにするから、待ってろ』
芯の通った声でそう言われて、……返事をせざる負えないじゃないか。
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