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「ちょっとごめん……!」
秋ちゃんにそう言って行こうとしたけど、その人も走り出して、まるで僕から逃げているみたいだ。
……もしかしてあの人が…?
その後、頑張って追跡してみたものの……運動は苦手だから、結局追いつくことも出来なかった。
?
「急に走り出して……どうした」
教室に戻って息を整えていると、小ちゃんが呟くように言った。
「ずっと僕達のこと見てる人がいたから、何か言いたそうだったし」
この場を誤魔化すためにも。
あの人の目はそんなものではなかった。……憎悪にまみれたような、全身が震え上がるような。
そこから感じ取れるのは、僕への恨みというところか……はたまた殺意というものか…………。
「もー、りっちゃん!行動不思議すぎ~」
「……ごめんごめん」
苦笑いをして詰め寄ってくる秋ちゃんとの間に、手一つ分の隙間を作る。
「おい秋葉。律……、顔色凄く悪い。…帰るぞ」
「あ、…待って!」
先に歩き始めた小ちゃん。秋ちゃんを振り切るチャンスだったから、僕から声を掛けると、律儀にその場で止まって待ってくれていた。
「大丈夫か」
「……うん」
追いつくと、一言いって歩き始めてくれた。
……優しいなぁ。
「えー!ちょっと俺置いてくのやめてよ~!?」
秋ちゃんの声も聞こえたけど、まあいいや。
そういえば和慎君はというと、今日は塾の日だったと思う。だからいなかったのかな。
しかしあの"ドアの人"<ドアの所にいたからドアの人になった>は何だったのか。
今にも吸い込まれんばかりの目。
一言で表すなら闇だ。
思い出しただけでこんなに鳥肌が立つのだから、顔色が悪いのも本当かもしれない。
そういえば、これは天宝院先輩にも話すべきこと……?
嫌…………でもあの人は生徒会長。職務も忙しいはず。だったら……言わずにおこう。
一度取り出して開いたメールの下書きを削除して、閉じる。
その様子を不審そうに見る小ちゃんにも、僕は気づいていなかった。
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