アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
不思議なこと said小葉
-
律が考えていることはいつだって読めない。それは、感情を表情にも言葉にも行動にすら出さないからだと思う。何故かはわからない。
そしてその感情を読み取ることが出来る時。それは人の心配をする時なんだ、とさっき気付いた。
移動教室の時、突然階段下に落下していく律を助けることも出来ずに呆然と見ていた。
時間が止まったみたいにスローになった。それでも手は届かず……でもその時ふと律の表情を見ると、まるで驚いた様子もなかった。
それは突然のことすぎて表情に表せなかったのか、それとも……………あまり考えたくもないけれど。
家に来た時から不思議な男だ、とは思っていた。
わかっているつもりでも何も知らないし、わからない。
その日の帰り道。
メールを開く律の携帯に、思わず目をやると"天宝院 柊"の文字が見えた。
何故律が生徒会長の連絡先を知っているのかと考えたけれど、階段で助けていたのが彼だったことを思い出して合点がいった。
でもその時、モワッとした感覚がした。それがなんなのかはわからないが、あまり気分のいいものじゃなくて。
律は何かを打とうとしていたけど、途中でやめて携帯をしまった。
不審に思った。
ただ、本当に。
◇
「秋葉」
二人きりの静かな部屋で弟の名前を呼ぶと、「なぁーに小葉」と……さっきまで読んでいた漫画をベッドに放って俺に後ろから抱きついてきた。
「律のこと、どう思う……」
「え、りっちゃん?」
律の行動をしっかり見ていると、変というより……不思議だ。
自分のためになる事はやらない。でも逆に、それをしなければ迷惑をかけるってことに関しては凄くやる気を見せる。まるで自分なんて存在しないみたいに自分を扱う。
本当は辛いはずの時に限って、完璧な笑顔を見せる。
「りっちゃんは……強い人だな~って思うよ~」
「……強い、人…」
その表現に賛成できる部分は勿論ある。
精神的にも凄く大人だし、高校生の度を超えていると思う。
でもどこか危うい。
目を少しでも離せば、消えてしまうんじゃないかと怖くなるくらいに。
「……俺は………………少し、怖い」
秋葉はその言葉に怒ることもしないで、ゆっくり俺の髪を撫でた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
39 / 281