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「……なんで、いや貰えません。僕は生徒会でもなんでもなく、ただの一般生徒ですよ?」
表情ではニコニコしてみたけれど、冷や汗は止まらない。
またそんな大変な事に巻き込まれるのは、ごめんだ。
「慌ててるね?大丈夫、遠慮しなくていいから。俺達生徒会も風紀も全員承諾済みだし、君のこともしっかり伝わっているよ」
「そういう事では……僕は全然大丈夫ですし、その…」
「大丈夫?立て続けに危ない目に合っているというのに、よくそんなことが言えるものですね」
突然、目の前の人達からではない声が聞こえて体がビクッとなる。
声のする方を見ると、いつ入ってきたのか…風紀委員のバンドをつけた人が立っていた。眼鏡の……いかにも風紀委員って感じの人だ。
「こら矢野……いきなり後輩に向かってそれは無いよ」
佐倉先輩は呆れ気味にその人を見た。
矢野、というのがこの人の……。
「失礼、二年の矢野 有生(ヤノ ユウセイ)と言います。風紀委員長補佐をしています」
「宜しく、お願いします......」
明らかに機嫌が悪いです、という顔をしている彼。さっきの僕の言葉が気に入らなかったんだと思うけど。
◇
「改めて言わせていただくんですが……僕は本当に大丈夫です。このカード、お返しさせてください」
テーブルにそれを置き直す。
「矢野と同じことを言うつもりではないけど、俺も賛成できないね。階段から落とされて、次は花瓶も落とされて……下手をしたら死んでいたかもしれないことが二つも起きているんだよ律。俺達には君を守る義務がある。風紀や生徒会としても、一生徒としても、人間としてもだよ。
このカードは君を守る一つの手段だ、少なくともここにいる時は安全だという俺達からの提案だと思ってくれていい」
「………………例え提案だとしても、受け取れません。天宝院先輩、僕言いましたよね。本当に大丈夫ですから。階段の時は僕がボーッとしてただけで、多分誰かと当たってしまっただけです。今朝の花瓶だって、僕が避ければこんな傷にはならなかったわけで……だから決して誰かが悪いとかでもなく僕が怪我をしたのが事の発端なのでしょう?なら僕は大丈夫です」
何度も念を押すけれど、彼らもまた……引き下がらない。
矢野先輩は僕を睨みながら溜息をついた。
……。
守らなければ、とか。
義務、とか。
そんな義務、消えればいい。
◇
「俺から一つ質問しても?」
佐倉先輩が沈黙を破って呟く。
はい、と返事をすると先輩はすぐに僕の方を見た。
「君の話を聞いていると……なんか犯人を庇ってるようにしか聞こえないけれど、それは気の所為?もしかしてもう律君の中でさ、犯人の人物像見えてるんじゃないの?」
僕の話が……犯人を庇ってる?
「…………庇う……?」
「うん。だってさ、"誰が悪いわけでもない"とか、"事の発端が君"だとか言ったよね?俺からすれば一番の悪者は犯人だし、事の発端が君ってわけでもないんだけど。どうしてそんなに自分を下に見てるのかな?」
僕……犯人を庇うつもりはない。
でも…もちろん、怪我をした僕が悪い。
だって僕が怪我をしなければ先輩に出会うこともなかったわけだ。生徒会や風紀委員にまで迷惑をかけて。
とんだ厄介者だ。
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