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3 said和慎
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薄ら聞こえてきた会話に耳を傾けた。
段々と意識も覚醒して、会話がはっきり聞こえるくらいになった時。ようやくそれが律の声だとわかった。
律だけじゃない、足音が二つ。
俺が寝ていたのは屋上のドアのさらに上にある、ポンプみたいなのがあるところ。だから見つかることもなかった。
律達はこの高台の真下で話しているようで、俺は音を立てないようにその様子を伺った。
見ると律は手を強く握られていて、顔を歪ませていた。
律の腕を握るその手を見て、何かわからないモヤッとした感情を覚える。
なんだか妙に苛立った。
▽
少しすると1人は屋上を出ていって、律ともう1人になった。
やばい、心の中でそう思った。
そいつは「この時を待っていた」とか気味の悪いことを言って律に近づく。息も荒く見えた。
助けなくては、と思って飛び降りようとした時。
そいつはチラッとこちらを見て、とんでもなく不気味な笑顔を向けてきた。
「っ……」
その笑顔に身体が止まる。まるで金縛りにあったみたいに動けなくなった。
最初から、俺がいることに気づいていたようだった。
それに対して律は「そういうの下手だし」なんて。
耳を疑った。
しかも見れば彼の顔は、いつも通りの笑顔なのだ。
……俺は初めて律のことを、"怖い"と思った。
でも、無性にその事実を確かめたくて。
自分の怒りが収まらなくて。
俺は出ていった律を追いかけた。
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