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痛覚と対価
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静かな廊下に響く音は僕の足音だけ。
和慎君が追ってくることも無かった。
その事に対して、ただただ安堵の表情を浮かべた。
最近走ってばかりな気がする。少し、胸が痛くなっていた。
「……」
あまり切れない息に戸惑う。
それと、朝の事件でついた傷。
実はもう触っても全然痛くなくて。
切ったんだからそんな事ないだろうと思っていたんだけど……。
痛覚を、どんどん奪われていくみたいだった。
自分の体の感覚は、徐々になくなっていくんだろうか。
そんな恐怖に駆られる。
▽
あっという間に時間は過ぎて、もう授業終了時間。
各教室から生徒がぞろぞろ廊下に出てきていた。
それに紛れて自分の教室に入ると、すぐ目の前に小ちゃんの姿があった。
向こうも僕に気づいて寄ってくる。
でもどうしよう。
関わっていいものだろうか?
関わるなとは言われたけれど……事情を知らない彼からしたら"ただ避けられる"という、とんでもなく理不尽な状況になってしまうんじゃないだろうか。
「おかえり。……大丈夫、…だった?」
静かだけど心配してくれているその声に、とりあえず普通に答えることにした。
「ありがとう。…大丈夫だよ、何も無かった」
ニコッとすると、安心したように顔が緩む。
わかりやすくて純情な人という印象。
こうしてさり気なく女の子を落としていくんだろうなぁ。
でもやっぱり周りに気を配ってみると、すごく感じる。
視線。
ずっと監視されているみたいで嫌だ。
ブルッ、と少し体が震えたような気がする。
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