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『別離、それは。』
崩壊を思わせる音は、いつだって耳の近くで聞こえていた。
それに気づかないふりをし続けたのはこの俺だし、最後の最後で終焉に導いたのも、間違いなく俺だった。
あの時の俺が選んだのは、今の俺からしてみても最善で、最高の選択肢。
ねぇ。
"別離"、その意味を、君はちゃんと理解できていたのかな。
ー 別離まで、あと2回。
ふと目を覚ますと、部屋の中は真っ暗だった。彼、晴(はる)は働かない頭で考える。
(あぁそうだ、俺は佐々木に呼び出されて…)
じわじわと動き始める思考と、広がる嫌な予感。部屋が、暗い。
晴は恋人である佐々木に呼び出されてここに来た。合鍵で部屋に入り、適当に時間をつぶして、『悪い、飲み会が入った。出来るだけ早く帰るから』という彼からのメールに少し落胆しつつ彼を待っていた。
なかなか帰ってこない佐々木に、つまらないテレビ。晴は居間のソファでついうとうとしてしまい、意識が戻ったときには部屋が真っ暗だった。目を閉じる前、確かに電気はついていたはずなのに。
つまりは、佐々木が帰って来ているということだ。
「佐々木…?」
駄目だ引き返せと頭の中で誰かが叫ぶ。それでも、始まったカウントダウンを止めることは出来ない。
晴はキッチンを抜け、廊下を歩き、寝室へと少しずつ進む。
みし、みし、とフローリングがうるさい。
けれど、みしみしと鳴くのは床だけではなく、そのほとんどは佐々木が揺らすベッドからの音。
「は、は、んっ」
「声出すと聞こえるよ?いいの?」
「も、いじわ、る…ぁっ」
ドアは少しだけ開いていた。
そこから見えるのは、最愛の人が見知らぬ女を抱いている残酷な状況。
これで、4回目。
かちりと、確かに晴は何かが減った音を聞いた。
ー 別離まで、あと1回。
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