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あと、0回。
「ふふふふ…ふふふふふ…」
その日はあっけなく来た。結局晴が必死で注いだ愛の言葉は功を為さず。佐々木はまた見知らぬ誰かの上で腰を振っていた。
今日の相手は男なんだね。5回中、3回女。2回男。なんてバランスの、いい。
自嘲気味につぶやいて、晴は音を立てずに玄関を出た。階段を降り、佐々木の郵便受けを開ける。
さよなら。あと一度だけ会うだろうけれど、今のうちに言っておきます。さよなら。
合鍵をかちり、と置いて扉を閉めた。
*
「ぁ、ぁ、ぁ、」
「、」
男にしては高い声、媚びるような瞳。目が合うと、佐々木の下で喘ぐ男はキスをせがんだ。
求められるままに唇をふさいで、廊下にいるであろう晴に見せつけるようにして腰を打ち付ける。
いつもの通り、佐々木は適当な相手を家に呼んで、身体を重ねた。
晴を呼び出し、彼が家につくまでの時間を計算して、「鉢合わせ」。
彼の計画は完璧だった。けれど、成功はしなかった。
「はる…?」
「ぇ、はるって、誰?」
突然動きを止めた佐々木に、戸惑う彼の下の男。けれど佐々木にとってそんなことはどうだっていい。
「はる」
ドアに向かってそう呼びかけてみても、そこには人の気配はなく、いつもなら押し殺した泣き声が聞こえるというのにそれもなく。
佐々木はためらいもなく男からモノを抜き、膝まで下ろしていた衣服を戻した。
ドアを開けても誰もいない。
どうして。
確かに、晴が来たのは鍵をまわす音で分かったし、玄関のドアが開いたのも、フローリングを歩く音も、佐々木にはちゃんと聞こえていた。
それなのに、何故?
「はる!!」
リビングや、風呂場や、トイレや。広くはない部屋を隈なく探した。そこに晴の姿はなかった。
「ねえ、どうしたの」
男が佐々木の後ろからひょっこりと顔を出す。
「帰れ」
「え、だって途中、」
「いいから。帰れ」
佐々木は男を家から追い出し、晴に連絡するため携帯を取りに寝室に戻った。
ねぇ晴、なんでいないの。なんで怒らないの。なんで傷付かないの。もう、俺のことなんてどうでもいいの。
佐々木が郵便受けの合鍵に気づくのは、もう少しだけ先の話。
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