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晴のことを探して数日。家には帰っていないようだし、高校生の頃に聞いた実家の電話番号にかけてみても何の収穫もなかった。
佐々木は途方にくれていた。
好きで、好きで、とにかく好きで。
なのにどうしてあの子は俺の隣にいないんだろう。
高校生の頃同じクラスになってから、可愛らしいその容姿にまず目を奪われた。
しばらく関わっていくうちに、意外と芯があって頑固だということを知った。そんなところを、愛しいと思った。
誰かに対して愛しいという気持ちを抱くのは、初めてのことで。
ずぶずぶと晴に溺れていく自分をこわいとも思ったし、それがしあわせだとも思った。
全寮制の男子校という閉鎖された空間で、佐々木はできる限り晴と一緒に行動した。
部屋まではさすがに同室ではなかったけれど、しょっちゅう中庭に呼び出してはベンチで夜中まで話したり、
土産だなんだと晴に自分と同じ物を持たせたり、
そういう時間は佐々木をものすごく満ち足りた気分にさせた。
だから晴に告白の返事をもらったとき、絶対に彼をしあわせにすると決めた。そして佐々木にとってもそれが最上のしあわせだと思った。
夕暮れの教室。
窓から入るオレンジ色の光が黒くなる前にと、話しだそうとしては口をつぐみ、また話しだそうとしては失敗した。
そんな佐々木を晴はじっと見つめていて、その顔はいつも以上に綺麗で。
そんな晴を前にして、気持ちが溢れ出た。泣いてさえいたかもしれない。
ああしあわせだ。俺はこれ以上何もいらない。
佐々木はそのとき確かにそう思ったのに。少しずつ、欲張りになっていくのを止められなかった。
きっかけは、進路について考え始めたことだったと思う。
自分の将来は?晴の未来は?この学校を出たら俺たちはどうなる?大学は?その先は?
不安でどうしようもなくて、何か見つけないとと思った。
佐々木の親は病院を持っていて、元々は継ぐつもりはなかったけれど、それもありだと思った。
医者になれば、親の希望は一つ叶えられる。社会的地位も手に入る。そうしたら、晴とずっと一緒にいられる可能性も増えるのではないか。
親から散々に期待されていたこともあり、渋々とではあったけれど勉強はしていたし、実力のある進学校で成績も上位を維持していた。
佐々木は、外部受験を決意した。
実際、内部進学という手もあるにはあったけれど、閉鎖された高校という場から出た自分が、晴を縛ろうとするのは想像がついたし、
そんな風に晴を束縛することは本意ではなかった。
晴が自分以外と笑うとするなら、できれば自分の目には届かない場所であればいいと思った。
その結果がこれだ。
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