アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
15
-
ーーー
ーー
ー
崩壊を思わせる音は、いつだって耳の近くで聞こえていた。
それに気づかないふりをし続けたのはこの俺だし、最後の最後で終焉に導いたのも、間違いなく俺だった。
あの時の俺が選んだのは、今の俺からしてみても最善で、最高の選択肢。
「別離、か」
ぽつりと呟いた晴の言葉に、隣で講義を受けていた友人がきょとんとした顔で晴を見た。
「What did you say?」
「…Nothing.」
何か言った?という彼の言葉に小声で何でもないよと返して、教授の方に目をうつす。
広い教室で、身体の大きな男性が大げさとも思えるジェスチャーで講義している。
(やっぱり日本人とは全然違うな)
元々、英語が好きだった。短期でもいいから留学してみたいと考えていた晴だったけれど、
佐々木を置いて行くということを考えると真っ先にその選択肢は消えた。
きっと依存しすぎていた。あの頃の自分は。
佐々木が、佐々木の、佐々木と。
自分の将来についてさえも、彼の存在によって自ら制限していた。佐々木。それは晴にとってきっと言い訳のひとつだった。
晴の大学の姉妹校なら年単位で海外に行けると聞いたとき、行きたいと思った。
彼と離れられるという理由を抜いて考えてみても、行きたい気持ちは強く残った。
9月から、晴は日本から遠く離れた空の下で授業を受けている。
そんな日々ももうすぐ1年が経とうとしていた。
別離、それは。
別れること。離れること。
これは最高で、最善の選択肢。
未だに毎日のように晴は佐々木のことを考えてしまう。まぶたの裏側には彼の笑顔。
けれどもう一生、彼に会うつもりはない。
だからどうか、しあわせに。
俺もいつか、しあわせになるから。
終わり。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
15 / 16