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ラニアン襲来-10
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ラニアンが意識を取り戻してからの律耶はそれこそ般若のようだった。
「漣人に何をした!!」
地獄の底から響いて来るような声でラニアンと対峙する律耶に在りし日の鬼軍曹さまを見た。
自分の為に怒りを剥き出しにしてくれていると思うと、全身がむず痒いような変な感覚になる。
(カッコいい……)
緊迫感溢れる場面だというのに、漣人の為に怒ってくれている律耶が未だ嘗てないぐらい男前に見える。
半袖のシャツから出ている腕に浮かんでいた雨粒はすっかり乾いている。
大っ嫌いな雷が鳴り響く中、漣人を探しに走り回ってくれた律耶の腕はどうしてか一回り逞しくなったように思えた。
(おかしい……こんなの)
今まで全く意識していなかった律耶の男らしさが次々と浮き彫りになってくる。
律耶に見惚れているお陰で、ラニアンが小声で弁解しているのもせいぜい半分しか頭に入ってこない。
「出水と……こいつが一緒に学校に来るのを見て……」
律耶は今までに見たことがないような優しい態度で漣人に接していた。
ピアノを始めたばかりで下手くそなのに凪から直接習っているのが気に食わなかった。
それだけではなく、あろうことか律耶にまで教わり出した。
律耶の指導を受けるというのはサークルの部員にとってこの上ない名誉とされている。
自分が壮絶な努力をして手にいれたその座を、ポッと出の下級生がいとも易々と手にいれた。
見た目でも優れているならまだしも、自分の足元にも及ばない平凡な容姿なのに。
「もういい」
「!」
「!」
吐き捨てるような律耶の一言に、場の空気がスッと冷えた。
「俺のレッスンは今後受けさせん。後の事は凪が帰ってきたら指示を仰げ。行くぞ、漣人」
うんざりとした表情で立ち去ろうとした律耶は思い出したように中濱に向き直った。
「お陰で漣人が助かった。礼を言う」
「いや、偶然見つけただけだから」
「それでも、本当に助かった。ありがとう」
深々とお辞儀をした律耶が頭を上げると、その表情は険しいものとなっていた。
「だが、中濱」
「?」
「何で練習サボった」
大事な後輩の恩人にも、ピアノの事では容赦がない。
「いや、サボったんじゃなくて忘れてたんだ」
「忘れてただぁ?」
平和な空気を崩さない中濱に律耶の目が吊り上がる。
「まぁまぁ、怒らないで」
自分のせいで巻き込んでしまったのだからここは中濱を援護しなければならない。
一回り逞しくなった上腕にそっと掌を乗せると律耶が目を剥いた。
「と、とにかく休むときは連絡しろ」
耳まで真っ赤になったのを誤魔化すように早口でそれだけ言って歩き出した律耶を慌てて追いかける。
「ありがとうございました!」
律耶に追い付いたところでパッと後ろを振り向いて礼を言うと、中濱は笑って手を振ってくれた。
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