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ハネムーン 2 (士郎side)
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空港で待ち合わせた龍之介は、搭乗時刻ギリギリにやってきた。
搭乗ゲート付近でこちらに気づくと、小さなボストンバック片手に、軽く手を上げた。
サングラスをしていても、やけに目立つ。
Tシャツの上に薄手のブルゾンを引っかけ、細身のパンツに身を包んでいるだけなのに、雰囲気が無駄に艶っぽい。
垂れ流しの色気に、近くにいる成熟した男女はもとより、老いも若いも皆、釘付けだった。
見慣れているはずの自分でさえ、目を奪われてしまう。
視線をそらすのにさえ、苦労した。
夏の名残の暑さのせいで、館内は冷房で心地よく冷やされていたが、手の平にジワリと汗が滲む。
「……遅い」
嬉しさと焦りを隠すようにギリギリの到着を詰れば、
「悪かったって。外せねェヤボ用があってよ。……まァ、ギリギリ間に合ったンだ、許せ。な?」
龍之介が肩をすくめながら、小型のボストンを持つのとは逆の手で、甘えかかるように肩を抱き寄せてきた。
「……っ」
突然触れられ、龍之介の匂いに包まれると、どうしようもなく肌がざわめいて参る。
切ないほどの震えを悟られたくなくて、最終案内の流れるゲートへと足早に向かう。
搭乗ゲートから飛行機の入り口までの通路で、内緒話をする風に頬を寄せられたかと思うと、人目を盗むように唇を奪われた。
「ん…っ」
強引に忍び込んできた肉厚の舌が、味わうように口内を蹂躙し、離れていく。
「……っ」
ここをどこだと思ってると睨みつけたものの、
「……オマエの味だ」
満足そうに指先で己の濡れた唇をぬぐいながらそう言われてしまえば、怒りは瞬く間に溶けて、どうしようもない切なさばかりが胸をえぐる。
「……足りない」
ほとんど唇の動きだけで落とされた嘆きを、たった一人、龍之介だけが聞いていた。
触れた肌の温度が上がる。
「……ったく、あンま煽るンじゃねェよ。ガマンできなくなンだろーが」
狭い機内で何の拷問だと、龍之介が天を仰ぎ、ため息をつく。
肩を抱いていた手の平が腰を経て、双丘をつかむのを感じ、さすがに飛び退いて、睨みつけた。
「やり過ぎだ……!」
「ははっ、潤んだ目で睨んだって、怖かねェよ」
慣れないシチュエーションに自分が戸惑っているように、龍之介もまた、いつもとどこか違って見えた。
サバンナを悠然と歩く百獣の王の余裕はそのままに、普段は低い温度でヒリつく空気感が、どことなく和らいで見える。
まさか、浮かれてる……?
まじまじと見つめれば、アゴを上げて、ンだよ……、と斜めな視線が返ってくる。
……甘い。
自分にだけ向けられる種類の熱。
嬉しくて、胸の奥から喜びが湧き上がり、首筋がカァッと熱を持つ。
「ンな顔すンな。……ヤベェから」
「……っ」
おまえこそ、そんな甘い声でささやくな。
まるで全身に甘い毒を塗り込められるかのようだ。
身動きを封じられ、暴かれていく。
おまえが欲しいと、今度こそ声に出して告げそうになる唇を……伸びそうになる指先を。
必死にこらえるばかりで、言葉になどならない。
「……なんて顔、してやがる」
やがて芳醇な酒を含むようにひっそりと、笑われた。
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