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始動 6 (龍之介side)
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幾重ものセキュリティーゲートを、気持ちいいほどゆうゆうと抜けていく。
同伴されている龍之介自身も、申し訳程度に調べられはしたが、ほとんどフリーパス状態だった。
途中、倍ほども年の違う将校クラスの制服を着た男とすれ違ったが、敬礼することもなく、気軽に挨拶を交わし、同等の扱いを受けていた。
いくら出自がよかろうと、兵士という生き物はそれだけではけして心を開かない。
従うに足る男かどうか。
共に戦場を駆け、背中を預けられる男かどうか。
常に見られ、推しはかられている。
ゼロはその無言のテストに合格したのだろう。
かなりヘビーな二足のわらじだが、双方ともに自由度の高い役職なら不可能ではない。
だが、どうやって組織に入り込んだ?
ユーリに読まされた資料によれば、ドルフやアキラがキリヒトに助けられ、悪名高い人身売買組織傘下の娼館から助けられたのは、まだその多くが10にも満たない子供時代だったという。
始まりはもしかしたら偶然だったのかもしれない。
リンフィールド家には特殊な家訓があり、10歳の誕生日を迎えた男児はサバイバル訓練と称して独り密かに家を放り出されるらしい。
それから5年間、誰の助けも借りずに生き延びることを強いられる。
無事15の誕生日を迎えた者だけが家督を継ぐ資格を得るのだ。
リンが昔よくボヤいていた。
飢えても死にかけても平気で放置されたと。
死んでも替えなどいくらでもいるとばかりに。
そんな環境のもとで育てば、どうしたって打たれ強くなる。
精神的強さと絶対的権力、双方を手中に収めるからこそ、リンフィールドの人間は強いのだ。
面倒なことになったと思う一方で、その強さにゾクゾクと歓喜する自分がいる。
まったくもって、どうしようもない。
平凡な人生など、クソ食らえ。
ただ呼吸するだけなら死んだ方が遥かにマシだ。
常に灼熱の中を駆け抜けていたい。
たとえそこに想像を絶するほどの痛みが存在するとしても。
「どーぞ、お嬢さん」
部屋にうながされ、袋小路に追い詰められていく気分になる。
……悪くない。
シュッと空気音を立てて閉まるドアの向こうに士郎への愛しさを閉じ込めて、一時の仮面を被る。
勝負の行方は、未だ知れない。
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