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前編
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悲しい。
月島が喋れなくなった。
目が覚めたら声が出なくなっていたらしい。
だからか、今日遅れてきたのは。
原因は不明。
…らしい。
と言われても、俺にはわからない。
何故ならば。
見えるからだ。
月島の、声が。
見える。
いや、声は聞こえない。
だから月島が喋れなくなったと聞いてすごく驚いた。
澤村さんが本当に喋れないのか、と聞いて月島がはくはくと口を動かしたとき。
月島の口から、きらきらと何かが落ちた。それは星みたいな形をした粉みたいな感じのもので、その中に黒い文字が混ざって地面に落ちていった。
その文字は拾い上げることが出来た。不思議に思って口に含むと、少し苦い味がした。そんな俺を皆不思議そうに見ていた。だから俺も皆にはこれが見えてないんだ、と知った。
それが三日前。
あの日から三日たち、わかったことは、月島の文字の味は彼の感情によって変わるということ。
あの日、落ち込む月島に山口がショートケーキを買ってあげる、と言うと、月島の口から本当?という文字と星が落ちた。気になって食べてみると、すっげぇ甘かった。
あと、月島は俺に近づいて欲しくないらしい。
近づくと露骨に嫌な顔をされた。なんだあいつムカツク。
月島は、俺の前では絶対に喋らない。俺が声を見えると、味で感情がわかると言うとものすごくショックを受けたような顔をした。
…だがしかし、残念だな月島。今お前の言いたいこと分かるのは俺だけなんだ。
つまり俺とお前は二人でワンセットなんだよ。先輩たちがそうするからそうなんだよ。諦めろ。
そう言うとすげぇ目で見られた。何アレ怖い。
そんなある日、あいつが山口と紙で話していた。
彼らが立ち去った後、その場所に行くと『き』が落ちていた。食べてみる。
苦い。切ない。悲しい。
俺の頬を涙が伝う。
何故こんなに泣けるのか。
月島は何を思ってこの
『き』を口にしたのか。
月島も、泣いたのだろうか。この言葉を口にしながら、涙を流したのだろうか。あの白い肌に、金色の瞳から透明な涙を伝わしたのだろうか。
今までだって食べたことのある筈の月島の『き』。
こんなに切ない味は食べたことがない。これは何?
「すごく切ないって…あなたそれ恋でしょう?」
…は?
保険医のその言葉は俺を酔わす。
俺の心を毒した月島の『き』は、もしかしたら
『好き』の『き』なのだろうか。
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