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たとえ俺がお前に必要とされなくなる日が来ても。
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授業は真面目に受ける。
それが幸村にとって学生として当然の心構えだ。
真面目に話を聞き、しっかりとノートをとって。
隣の席の前田慶次―慶次とは正反対だ。
キンコンカンコンと鳴り響くチャイムの音。
幸村はその後に残っているHRもしっかり背を伸ばして聞き、先生の話も、少しの注意事項も聞き逃さず、そうして真面目な幸村の毎日の学校生活が終わる。
「じゃあね、旦那。早く帰ってきなよー。」
佐助が幸村の席の隣を通る際に話しかける。
「ああ、分かっておる。」
幸村も笑んで返す。
ヒラヒラと佐助が背を向けたまま手を振った。
他の面々も別れの言葉を口にしながら帰ってゆく。
全てにしっかりと返して幸村はふぅと息を吐いた。
教室に残る生徒が居ないことを確認して幸村は顔を上げる。
「政宗殿、して話というのは。」
「あぁ、悪いな。」
政宗が立ち上がってこちらに向かってくる。
幸村も政宗にしっかりと向き直して言葉を待つ。
「お前に言うのは正直迷ったんだがな。言うことにした。」
「あ、ああ。それで・・・。」
幸村が先を促す。
「俺はお前が・・・幸村が好きだ。」
「は・・・?」
「返事、聞かせてほしい。」
「いや、返事も何も・・・。某も政宗のことは皆と同様に好いておりますが。」
「Ah・・・そういうことじゃねえ。俺が言ってんのは『like』じゃなくて『love』のほうだ。」
「らい・・・く?らぶ・・・?」
一瞬何の事だかわからずに、幸村は疑問符を浮かべた。
「つまり、お前を愛してるってことだよ。お前の話し方だと、『お慕いしております』か?」
「それ・・・は。」
漸く(ようやく)幸村も話を理解した。
「政宗殿・・・それは・・・。」
「Ah、分かってるよ。俺が何を言ってんのか。」
「某は・・・男にございまする。そのような言葉は女子に申すべきかと・・・な、破廉恥な!!」
幸村は自分で言った言葉に赤面する。
「知ってるぜ、ンなこと。だがな、好きなもんは好きだ。仕方ねえだろ。」
「政宗殿・・・。」
「で、お前は俺のことどんな風に思ってんだよ。」
「某も、其方のことは好いておりますが・・・、恐らく政宗殿の仰る『らぶ』とは違って信頼や敬愛といったものだと・・・。」
「そう、か。」
「それに・・・。」
「Ah?」
「政宗殿はとても素晴らしいお方。強く気高くそれでいて優しいお心をお持ちで。皆、其方のことを褒め称えます。」
「・・・。」
「某などでは、釣り合わないのです。」
「ンなことねえよ。」
「・・・いいえ。」
幸村は頭(かぶり)をふりながら少し自嘲気味に笑って言う。
「其方のことを、心の底から好いている者は沢山います。政宗殿は勘違いをされているのです。相手を間違えているのですよ。」
「・・・幸村、俺は」
「政宗殿、もう良いのでござるよ。」
幸村は政宗の言葉を遮って(さえぎって)言った。
「さて、某は佐助が待っています故、これにて失礼させていただきます。」
「幸村・・・。」
「政宗殿、某は嬉しく思ったのですよ?実に光栄なことですので。」
「幸村・・・俺は本気で・・・。」
「それでは。」
幸村は軽く会釈して教室を後にした。
「・・・チッ。」
教室には政宗の小さな舌打ちが響いていた。
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