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たとえ俺がお前に必要とされなくなる日が来ても。
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幸村が政宗に告白されてから、一ヶ月程経ったころだ。
「幸村、今日、予定あるか。」
「いえ、全く。」
「ちょっとでいい。待っててくれ。」
「分かりました。」
またもや、政宗に放課後の予定を聞かれた幸村は、だいたい何を言われるかを察した。
「佐助、すぐ追いかけるから先に帰っておいてくれぬか。」
「はいはい。今日、雨降るみたいだから早く帰ってきなよ。」
「ああ、分かった。」
そして放課後。
幸村は少し薄暗くなってきた外を少し見てから、政宗に視線をうつした。
「悪いな、幸村。あれから、暫く(しばらく)考えたんだがやっぱり諦めきれねえんだ。・・・なあ、幸村。俺は本気なんだ。お前が好きだ。」
「・・・また、それでございまするか。某は、某の答えは変わりませぬ。不釣り合いでござる。神様に怒られまする。」
また、幸村が自嘲気味に苦しい笑みをこぼす。
「どんなにお前が自分を貶そう(けなそう)と、俺はお前が凄く綺麗に見える。お前の仕草や言葉の一つ一つが愛しく感じてしまう。・・・なあ、お前は自分のことが嫌いなのか?自信がないのか?」
「・・・まあ、自信はありませぬ。好きでもありませぬな。」
「てめえは自分の価値に気付いていない。」
「それは、政宗殿だから言えるのでござる。全てにおいて完璧で誰にでも優しい政宗殿だから・・・。」
「じゃあ、お前は全てにおいて完璧な俺が欲しいと思った奴だ。」
「・・・ま、さむね、殿は・・・!どうして!某を苦しめるのでござるか・・・!!」
「Ah?苦しめる?俺がか?」
「政宗殿は狡い(ずるい)。政宗殿の当たり障りのない言葉一つ一つに、某が一喜一憂しているのを知っておりますか・・・?」
「・・・ゆき、むら。」
「某も其方が、政宗殿が好きでござる。まだ、『らいく』か『らぶ』かは分からないけれど・・・『らぶ』ならいいなと思えるほどには好意を抱いているでござる・・・!でも、某では枷にしかならないから・・・!好きだからこそ、某は、お断りさせていただいているのです。だから・・・もう、期待させないで・・・。そんな嬉しい言葉、容易に吐かないでくだされ・・・!!」
「おい・・・それって。」
「・・・ッそれでは、政宗殿。また明日お会いしましょうぞ。」
「おい!!幸村!!」
ダッと、幸村は踵を返すと走り出した。
教室を出、廊下を走り抜け、校門を飛び出す。
灰色の重々しい雲から、雫が落ち始めた。
それと同時に、幸村の瞳からも雫が零れだす。
「―ッ!!」
唇をかみしめ、雨の中、一直線に家を目指して走る。
目の前がぼやけて良く見えない。
だが、幸村はひたすらに走る。少しでも離れるために。
その時だ。
ドンッ。
「・・・え?」
鈍い音とともに鋭い痛み。
グラリと傾いて、目線が一気に落ちる。
雨と混じって、赤が広がる。
まるで水に赤い絵の具を垂らしたように広がっていくそれをぼやけた視界の端で見ながら、幸村は意識を手放した。
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