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たとえ俺がお前に必要とされなくなる日が来ても。
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「お早うござりまする!!!」
「!真田!!」
教室に響く威勢のいい声。
みんなが声の主のところに集まる。
昨日一日、入院した幸村は、退院し一週間ぶりに学校に来ていた。
「おーい、お前ら、チャイムなってるぞ。席に着けー。真田、もし具合が悪くなったら、直ぐに言えよー。じゃあ、授業始めるぞー。」
チャイムがなり入ってきた、数学担当の教師の一言で、みんなは各々(おのおの)自分の席に着く。
「じゃあ、昨日の続きからー。76ページの問3、分かる奴は挙手な。」
幸村も、背筋を伸ばして授業に集中する。
「(一週間分の遅れを取り戻さなくては。)」
問題自体は一週間前に勉強した公式を当てはめるだけなので、幸村はパラパラとページをめくり、最後に習った公式を見た。
「じゃあ、ここ分かる奴ー。あ、順番的に次真田なんだが・・・真田、分かるかー?」
「・・・ない。」
「ん、悪い、真田もう一回言ってくれるか。」
「・・・らない、お・・・せない・・・。」
「真田・・・?」
「・・・どうしたんだい。」
隣の席の慶次が、険しい表情で顔をあげる。
「幸ちゃん・・・!?」
慶次の目に映った幸村は
「分からない思い出せない分からない分からない思い出せない思い出せない・・・」
目を見開き、呪文のように同じ言葉を繰り返していた。
「思い出せなッ!!」
ぷつりー
「あ・・・。」
「目が覚めた?」
「佐助?」
幸村の同居人兼保護者である佐助は、幸村に何かあった場合、付き添いなどが出来るように許可を得ていた。
幸村は、ゆっくりと身体を起こすと
「・・・ここは、保健室か・・・?」
辺りを見回しながら言った。
「そう。旦那、何があったの・・・?」
「あ・・・。」
「ゆっくりでいいから、話してくれる?」
「佐助・・・。俺は・・・思い出せなくて・・・」
「うん・・・。」
幸村はぽつりぽつりと話し出した。
「先日、学んだことが思い出せなかったのだ・・・。数学の公式も、漢字も・・・。」
「え・・・。」
幸村は勉強を怠ったことがない。
『文武両道であれ』と、尊敬している、その人に言われてから、幸村は何事に対しても今まで以上に、頑張って向き合ってきていた。
復習も予習も欠かしたことがなかった。
それが、いきなり全て抜け落ちてしまっていたのだ。
「・・・一週間も、学校休んでたから、忘れちゃったんだよ、きっと。」
そう言う佐助の瞳には不安が映っていた。
「念のために、病院に行こうか。」
「・・・ああ、すまぬ。」
そのまま、教師に事情を伝え、二人は病院に向かった。
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