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「風景の他にも色々描くの?」
「うん。特に僕は可愛い物や甘い物が大好きだから、写真に撮ってあとからそれを見て描いたりもするよ。可愛いスイーツとか描くと癒されるんだよー」
つい無意識に自分の可愛いもの好きをアピールしてしまい、輝にまた微笑まれて恥ずかしさで頬が熱くなる。
「その話が聞けてさらに良かったって思えたよ」
「そうなの?」
「うん、実はもうひとつ話したいって思っていたことが、今の話に近いことでね。君に絵の依頼をしたいんだ」
少し驚いた表情を見せた楓に輝は今まで雅姫にさえ話さなかった、ひそかに自分がやりたいと考えていたことを話しはじめた。それはほぼ廃部寸前だった料理研究会というサークルを一年の時に立て直した話からはじまり、自分の趣味である料理を部員に週三で教えているということ。全て料理は自分が考えたオリジナルレシピがあるということ。そのレシピを大学にいる間に、本にして残したいという小さな夢を伝えた。今まで何に対しても無欲でこの件もぼんやりと思うだけだったのにそれが明確になったのは、明らかに楓の絵に出会えたおかげだ。
「それで、ただ料理の写真を載せて過程を説明するだけでは、つまらないなってずっと思っていて。もっと自分にあったものが作りたくて、何が足りないんだろうって考えていたんだ。そこで俺には君の絵のような温かさが必要だって気づいたんだ。自分で言うと虚しいんだけど俺は、良く回りから『無愛想』とか『冷酷』って言われるんだ。でも料理だけはそうじゃないって、温かいものでありたいって思っていて……」
「櫻木君は無愛想でも、冷酷でもないと思うよ」
話の続きを考えていると楓が真剣な眼差しで、人の心を理解しているような芯のある真っ直ぐな言葉をくれた。
「少なくとも僕にはそうは見えないっていうか。櫻木君は自分をちゃんと分かっていて堂々として見える。こうして僕と話していても、笑ってくれるしちゃんと温かさも伝わってるよ。だからきっと櫻木君が作る料理も、優しくて温かいんだろうなあ。きっとね、櫻木君のことを無愛想とか冷酷って言葉だけで片付けちゃう人は、ちゃんと接しようとしていない人というか……。櫻木君も相手がそういう人だと分かっていて、『言わせておけ』って感じで接しているんじゃないかな?」
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