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「何やってんだよ……」
楓が怖がらないように声のトーンは落としたが、まだ輝の苛々はおさまらない。今日はもうこれ以上話さない方がいいのかもしれないと思い黙って歩き出すと、その足が止まるようなことを楓が言いはじめた。
「良く分からないんだ……」
「分からないって何?」
歩みを止めたがどうしても楓を見ることができず、足元ばかり見てしまう。まだ先ほどの熱と怒りが残っていて心にも余裕がなくて、このままだとまた知らない自分が出てきそうで怖かった。
「えーと……『付き合って欲しい』って言われたんだ」
つい今まで沸騰していたはずの頭の中が、今度は急に冷たくなるのを感じた。やはり今日の自分はおかしい、もう聞くことも話すこともやめたいのに楓の声はどんどん体の中に入ってくる。
「それで僕『どこまで付き合って欲しいの?』って聞いたんだ」
「…………」
「どこに付き合って欲しいの? 君は何科の何年なの? って聞いたら服飾科の二年って言われて。今、帰るところだったから、ここから服飾科はちょっと遠いなあって言ったんだ。僕、あまり服飾科のことは分からないし……。そうしたら相手が突然焦りだして、聞き取れないくらい色々早口で言ってきて……」
もしかすると先ほど目の前が真っ赤に見えた時、自分の頭は壊れてしまったのかもしれない。そう思うくらい、楓が何を言っているのかすぐに理解できなかった。人間は驚きすぎると、本当に口を開けるんだな。なんてことを考える余裕はなぜかあって、楓が不思議そうな顔でこちらを見つめてきたので今の自分がかなりまぬけな顔をしていることが分かった。
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