アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
*
-
「昨日……輝と一緒に帰る途中で、知らない男の人に呼ばれたんだ……。それで……前と同じようなことがあって……」
以前、繭や成田がいる前でも男性からの告白があった楓は今回も同じ状況になったこと話すと、それを聞いた繭はなぜ輝が怒ったのかすぐに分かってしまった。
「それで……もう帰るから服飾科には付き合えないって言ったら、腰を掴まれて……」
「なにっ! それで……どうしたの?」
「輝が離れたところにいて待っててくれたんだけど……突然おっきい声で帰るぞって言ってきたから、待たせたら悪いかと思って……。それで行ったら……」
ーーあー……そりゃあ怒鳴るわね。鬼の形相で怒鳴ったんでしょうね……。
「あんな輝、見たことなかった……。でも僕……何が何だかわかんなくて。何かしちゃったのかな……。うぅ……嫌われちゃった……」
ーーしたと言えばした、していないと言えばしていない。楓君がこんな感じだから、輝君も大変よね……。でも怒鳴ったなんて、やっぱり輝君って楓君のこと……。
唸ることしかできない繭に泣きはらした目を向けてきた楓は、辛く苦しいとまた涙を流した。
「んー……どう言えばいいのかな……。輝君はただ怒りたくて、楓君を怒ったんじゃないと思うよ。どうして怒ったのかちゃんと聞いた?」
「聞くの怖い…………」
こればかりは繭が出るわけにはいかず、二人で解決する問題だ。怯えている楓の背中をさすることしかできずにいると、さらに追い討ちをかけるようなことが起こった。クラスの女子が二人のところにきて、伝言を頼まれたと話しかけてきた。
「今ね、男の人に声をかけられたんだけど、廊下の先を左に曲がったところにある階段の所に来て欲しいって楓君に伝えてって」
このタイミングは輝かもしれないと思った繭は、すぐに行くようにと楓の耳元で囁いた。
「きっと輝君が来てくれたんだよ。楓君と話したいことがあるんだと思う。行っておいでよ」
「うっ……怖いよ……」
「大丈夫。いざとなったら輝君を連れてこっちに来てくれたら、私が間に入ってあげるから」
優しく楓の背中を押した繭は重い足取りのまま教室を出ていった楓の後ろ姿を見て、本当にこれが正しい選択だったのか少し不安になった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
58 / 533