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今、輝に会いたくはない。楓はもつれる足で必死に走った。きっと自分の気持ちを言ってしまえば、そこで終わるのは分かっている。もう少し輝の側にいるためには次に会う時、何事もなかったかのような顔をして笑えばいい。
はじめて人を好きになったのにこんなに辛いなんて……。小さな頃、些細な言葉に傷つき今まで人に興味を抱いてこれなかった。そんな自分に生まれたこの感情が恋だったとやっと分かったのに、どうしてこんなに苦しいんだろう、うまくいかないんだろう。
何度も頭の中に響く「輝には沢山の彼女がいる」、「輝はみんなに優しい」という悲しい言葉。男の自分がこんなにも女々しいことを考えるなんて、思ってもいなかった。きっと怒鳴って逃げてしまったことで、もう嫌われたかもしれない。ぐるぐると色んなことを考えながら、涙で前もまともに見えないのに走り続けた。
走って……走って……苦しさで息ができなくなって、このまま胸の痛みを止めたかった。
ーーねえ、輝……助けてよ……苦しいんだ。輝が好きなのに苦しいんだ……。
楓は道端に座り込み、ひとめも気にせず泣き叫んだ。
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