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「くそっ……どこにもいない……」
輝は正門まで走り楓を探したが、もうどこにもいなかった。普段あんなにのんびりしてる楓なのに足だけは速い。はじめて会った時もいつのまにかもう消えていて、あの瞬間は夢だったのかもしれないと思ったくらいだ。楓のことを好きだと気づいてから自分の気持ちを抑えるのが大変で、ずっと見つめていたくて、ずっと触れていたくて堪らなかった。無意識に腕を伸ばし柔らかな髪に触れ、無意識に愛しい人を見つめ、これだけだ……これ以上は願わないと自分勝手なルールを作り楓に触れた。
ーー俺が今、何を思っているのか分かるか?
この言えない言葉が伝わればいいのにと、幼稚なことを願った。そして受け入れて欲しい、拒絶なんてして欲しくない。少し照れながら、眩しく微笑んで欲しかった。それなのに楓は泣いた。拒絶……された? 涙を流し叫んだ最後の言葉がどうしても頭から離れない。
「一緒にしないで」
誰と…………。
輝はあの時、掴んだはずの楓の腕が自分の手からするりと離れた時「終わった」と思った。でもどうして泣いたのか知りたい。どうしてあんなことを言ったのか知りたい。鞄も持たずに出て行くほどの用事が本当にあったとは思えなかった。もう一度ちゃんと話し合うため輝は一度調理室に戻り、楓の鞄を持ってアパートに向かった。
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