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「父さんは毎日遅くまで仕事をしているから、会社の近くに別のマンションを借りて住んでいるんだ。それで、父さんの食生活とかが心配な母さんも向うにいるから、二人がこっちに来るのは月に2、3回ってとこかな。俺は自炊できるからあまり心配されていないし、向こうも二人仲良くやってるみたいで安心してるよ」
「そうだったんだー。輝のお父さんは何の仕事している人なの?」
「ゲーム作ってるよ」
「えっ! クリエイターなの?」
「そんなとこかな」
「すごーい! どんなの作ってるの?」
「そこのテレビ台の中に入っているから見ていいよ」
輝が指を指したテレビの前にちょこんと座り台の中を見てみると、そこには知っているゲームソフトが沢山揃っていて楓は目を輝かせた。
「こっ……これって! 凄い有名なゲームだよ! 僕、小さい時からやってるから知ってるよっ! これ、輝のお父さんが作ったの? 凄い! 凄いよー!」
「うん。父さんと、父さんの弟も同じ職業なんだけどね」
「すっ……凄い……輝のお父さん神だ!」
「ん?」
「輝のお父さんはゲームの神様だったんだね!」
ーーあ……俺、今ちょっと自分の父親に嫉妬した。
楓はただ純粋な気持ちでそう言っているだけなのに、眩しい笑顔を見せて父親を褒めたことに面白くないと感じてしまった。分かっている、なんて自分は心が狭い人間なんだ。でもその笑顔も気持ちも自分だけに向けて欲しい、他の誰にも見せたくないと新たな欲が生まれた。
「……あとでやってもいいよ。良くヒメは来るけど、あいつ凄いゲーム上手いんだ」
「ヒメ君はいつも携帯でもゲームしてるもんね、上手そう!」
「そう言えば……うちに来たことがある人は、ヒメと楓だけだな」
「えっ…………前の……彼女は?」
ーーやっぱり聞いてきたか……。
「呼んだことないよ。呼ぶ気になれなかった……」
真っ直ぐ楓の瞳を見つめて、真剣な顔で話してくれるその言葉は本当なのだろう。今までの輝を考えると頷ける。少し意地悪な聞き方をしてしまったかもしれないが、真実を知ってほっとしたかったんだと思う。
「ほら、お茶入ったからこっちにおいで」
輝がソファに座り、自分の横に座るように導く。それは優しくて甘い声で、まるで魔法をかけられたみたいに引き込まれていく。まだたった一日しか経っていないというのに、こんなに幸せで良いのだろうか。
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