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☆欲しいもの キヨヒラ
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ヒラ視点
「んー…よく寝たぁ…」
窓から陽の光が射し込んで来る。
「眩しっ…」
昨日かなり遅くまでゲームしていたから爆睡してしまった。気付けばもう朝の11時だ。今日が休日で良かった。そうじゃなかったら完全に会社に遅刻だ。
のそっと起き上がりぺたぺたと歩きながらリビングの椅子に腰を下ろした。寝惚け眼でテレビをつけてぼーっと見ていた。
特にする事もなければやらなくてはいけない事もない。それは幸せな事だ。何かに追われて急かされて慌ただしく生きるよりマシだ。勿論そっちの方が幸せだという人もいるだろうが。
でも感じていた。順風満帆だけど何かが足りない。
何かが何なのかは分からない。でも何かが足りないんだ。画面に向かって一人で話していることは楽しい。そもそも楽しくなかったらやってない。でも分からないんだ。何が足りないんだろう?
そんなことを考えている時、玄関のインターホンがなった。
「誰だろ?」
思い出してみようとしても今日誰かが来る予定は無かった…はずだ。
玄関のドアを開けた。
「あっ、キヨだ」
「よーっす、ラーヒー!元気してっかー」
「まあまあってとこ。で、今日はなんの用なの?」
「いや、テンション低いな!?暇でよー。遊ぼうぜ!どうせ今日何もすることないんだろ?」
「ちょっ…!人のこと暇人みたいに…まぁ、言う通りですけど…」
「だろー?じゃあ、お邪魔しまーす!!」
「キヨ元気だなぁ…狭いところだけど、どうぞー」
キヨが来たからかは分からないけど、少し元気出た様な気がする。キヨって太陽みたいだ。声がでかいだけじゃなかったんだね。
そのあと、俺達はゲームを3時間程していた。おかげで手が痺れた。
「やー、遊んだな!」
「ね。もう目がしぱしぱする…」
ぎゅっと目を瞑ればうっすら涙が浮かぶ。
「ところで、ラーヒー。元気出たか?」
「えっ…あっ、キヨ…気付いてたんだ?」
「ったりめーよ!俺を誰だと思ってんだ?天下のキヨだぜ?」
「キヨって凄いよね…何でも出来るしさ。とにかくありがとう。元気出たよ」
実際本当にさっきより気分が晴れている。変な疑問ももう浮かばなくなっていた。
「辛くなったら言えよ?俺がいてやるからよ」
わしゃわしゃと頭を撫でるキヨの手は大きくて安心感を与えてくれた。
「…ありがとう」
「んじゃ、俺今日泊まっていい?」
「えっ!?随分急だなぁ…まあ、いいよ。こんな所で良かったら泊まってって」
「おっ!マジか!いけると思わなかったぜ!じゃあ、遠慮なくー。あ、あとこれやるわ。お茶」
キヨはペットボトルに入ったお茶を手渡してくれた。ちょうど喉が乾いていたので一口飲んだ。
「おお、何でお茶?まぁ、良いけどさ(笑)ありがとう。あっ、でも俺んち2つも寝るとこないや…キヨどこで寝る?」
俺の家には客人が来た時用の布団とかは無かった。あんまり、来る人は居なかったし…
「んー…ラーヒーと一緒に寝る?」
「一緒に!?キヨはそれでいいの…?俺なんかと…」
「なーに言ってんだよ。ヒラとだから安心して寝れんだろ?それに夜寂しくてヒラが泣かないように俺が一緒に寝てやろう!」
「泣かないとは思うけど(笑)ま、キヨが良いならいっかなぁ…」
「おー、じゃあもう寝るかー!」
「早くない!?まだお風呂も入ってないよ!?」
「俺なんか超眠いんだよー。風呂とか明日の朝で良くね?なぁ、ラーヒー。一緒に寝ようぜ?」
「えー…うーん…まぁ、分かった。寝よっか」
なんか幼稚園児の世話をしてる先生の気分だ。
「さっそく寝ようぜ!もう目が限界だぜ…」
「はいはい。ベットはこっちですよー」
キヨを寝室まで案内して横になった。
「ラーヒー」
「ん?何?」
「おやすみ」
「ん、おやすみ」
普段おやすみなんて言う人居ないから新鮮だった。
そして俺はすぐに眠りについた。その日は何故かいつもよりよく眠れた。
――――――――――――――――――――――――
「んっ…朝…?」
昨日と同じで窓から射し込む陽の光が眩しい。
起き上がろうと体を起こすと聞き慣れない鎖の音。
嫌な予感がした。
まだ眠たかった頭はもう既にハッキリしていた。と言うより否が応でもハッキリさせられた。
この状況を理解するにはまず頭を無理矢理にでも叩き起こす必要があるのだから。
(何が起こっているんだ?キヨはどこに行ったの?)
考えが追いつかない。とりあえず状況を整理しよう。
部屋は…自分の部屋じゃない。ここはキヨの部屋だ。何度か来たことがあるから分かる。
手を見ると手首に手枷が付いていた。そこから鎖が伸びていてベットに繋がっている。まだ片手で良かった。足も同じように片足だけ足枷が付いていて鎖で繋がれている。
何故片方だけなのかは分からないけど、動きにくくさせる用途で付けたのは確実だろう。
軽く整理してみたが、謎だらけだ。グルグルと頭の中を疑問が駆け巡る。
頭を抱えていると、部屋のドアが開く。項垂れていた頭を上げドアに視線を移すとキヨがいた。
「おっ、ラーヒー!おはよ!」
起きたことを確認すると嬉しそうに笑を作った。
「おはよう…じゃないでしょ?何これ?どんな状況?説明してもらえる?」
「分かった、分かった!説明するからさ。ヒラっていつも忙しそうじゃん?実況の他に働いたりさ、最俺で集まったりさ。そんな忙しいヒラを助けようとした訳!昨日だって表情やばいし、顔色は悪いし。助けてあげなきゃなって思ってさ!ちなみにここまで運べたのはヒラに渡したお茶に睡眠薬を入れといたから」
(睡眠薬…ね。どうりで一度も起きなかった訳か)
「俺キヨに助けてって言った覚えはないんだけど?そもそも助ける方法がこれなの…?おかしいって…思わなかったの?」
「助けてって言わなくても分かるんだよ!ずっと見てきたからさ。出会った瞬間に一目惚れして、今の今までこの気持ち隠してヒラのことずっと見てた。可愛くて優しくて頑張り屋で。そんなヒラを独り占めしたくなるのは当然のことだろ?独り占めも出来て、ヒラを助ける方法って言ったらこれかなって。おかしいなんて考えはさ、とうの昔に捨ててんだよ?ヒラはどう思う?こんなの嫌か?」
「嫌…だよ…家に帰りたいに決まってる。キヨの事が嫌いな訳じゃない。でもこんなの…おかしい…仕事だって行かなきゃいけない。実況も撮らなきゃいけなくてやらないといけないことだらけで…こんなコトして
る場合じゃ」
その時キヨは近付いて来てふわりと俺を抱きしめた。
「よしよし。ヒラは今までよく頑張ったな。でもそろそろ休んでいいんじゃね?頑張り過ぎていつか壊れそうだぜ?そうならないように俺がずっと一緒に居てやるよ。それじゃダメか?」
「キヨは…何で俺にここまでするの?俺なんかほっといて生きればいいじゃん。どうせ他人なのに何でここまでするの?」
「さっきも言ったけど俺お前のこと好きなんだよなぁ…好きって言うか愛してる」
「俺が…好き?愛してる…?」
「うん、もう狂おしいほどに」
「…本当に?」
「何度も言わせんなよ!恥ずかしい…/////だから好きだって!」
「あぁ…ははっ…」
これだ。
「どうした?ヒラ」
これだよ。
俺が求めてたもの。
欲しかったもの。
満たされなかった心が満たされるこの気分。
最っ高に心地がいい。
欲しかったのは
誰かからの愛。
「キヨ…」
「ど、どした?」
「俺もキヨのこと…好き」
「マジで!?」
「うん、好きなの。だからさ…一緒に居てくれる?」
俺はにこっと嘘で固めた笑顔を作り、笑いかける。
持ってもいない「好き」を相手にあげる。
「あぁ、居てやるよ。ずっと、ずーっと」
それにキヨは笑顔を返す。
抱きしめ合いキヨの愛を感じる。
あぁ、欲しい。もっともっともっと。欲しいの。
俺に愛をちょうだい?
死んでしまうほどに。
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