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☆監禁サイコパス【2】キヨヒラ
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次の日、目が覚めると昨日と全く同じ状況だった。そりゃそうか。夢オチなんて漫画や小説の中だけのの話だもんな。
そう言えば実況はどうなっただろうか。一応毎日投稿しているのだから視聴者さんが心配してくれているかもしれない。
生憎、携帯は入れていたはずのポケットに無くて連絡をしようにも出来ないと言った状況だ。
「よー、ラーヒー。おはよー」
ドアが開いてキヨが入ってきた。こんな状況じゃなかったら嬉々として返事をしているのに。
「…おはよ」
「どうしたんだよ、ラーヒー。元気ないじゃん?」
この状況で元気がある方がおかしいと思うけど。ひとまずそのことは言わないことにした。
「いや、実況のこと考えてて…どうなったかなって…」
「あ、その事なんだけどもう実況止めるって言っといたから」
「は…?」
「ヒラの振りして呟いといたからよ!安心していいぜ!」
「っ…何で?何でそんなことすんの!?頼んでない、俺が…俺がいつ楽しみを奪ってって頼んだ!?どうして何も言ってくれないの!?監禁することも、実況を勝手に止めることも、全部全部全部全部!子供じゃないんだからさぁ!一人で何もかも考えんなよ!」
つい堰を切って言葉が漏れてしまった。こんなに責め立てる様な言葉を使うつもりは無かったのに。こういう時キヨは何をするか分からない。だから、慎重に行こうと思った…
でも、流石に自分の楽しみを奪われるようなことをされるのは気に食わない。
「何でって…昨日も言ったけどさ俺ヒラが好きじゃん?誰にも渡したくない、見せたくないじゃん?もちろん視聴者にもさ。ヒラが可愛いって言うコメント多くて参っちゃうよなー。可愛いのは当たり前だけどヒラのことをそんなふうに見てると思うと憎らしくて殺したくなるからさ。殺人犯にはなりたくねぇしよ。刑務所に入ったとしたらヒラに会えなくなるだろ?
それよりヒラ。お前まだ俺の気持ち分かってくれてねぇの?こんなに思い伝えてんのに?何で?俺のこと嫌いか?」
ベッドの上に座ってこっちをじっと見るキヨの目は嫌いとは言わせない様な、そんな目だった。目線で捕えられるとキヨから一生逃げられない。そんな気がした。咄嗟に目を逸らして答える。
「嫌い…じゃないよ。俺のこと考えてくれてありがとう…ごめん、言葉キツくなって…キヨの気持ちよく…分かってるよ」
「そうだよな!ラーヒーなら分かってるって思ってたぜ!じゃあ、待ってろよ。朝ごはん持ってきてやるよ」
笑顔でドアから出ていったキヨを見送ったらどっと疲れが出てきた。本当は上辺だけの言葉を並べるのは嫌だ。
本音で話したいけど本音を言ったらキヨがどうするか分からない。もしかしたら暴力を振るうのかもしれない。そうじゃないかもしれないけど。念には念を、だ。
あぁ、もう頭の中ごちゃごちゃだ…
やめたくなかった。ゲームが好きだった。もちろん最俺の4人でゲームしたりふざけあったりする事も大好きだった。
それがもう出来ない。下手したら一生出来ないかもしれない。そんなの嫌だ。やりたいゲームが沢山あったのに。まだやってない事が沢山あったのに。
気付けばポロポロと涙を流していた。
キヨはいつからああなってしまったんだろう。何がキヨをあんな風にしてしまったんだろう。もしかしたら原因は俺にあるのかもしれない。
好意を向けてくれることは嬉しい。けどこんな方法で向けて欲しくは無かった。
そんな事ばかり考えて涙が止まらない。止めたくても感情のコントロールが上手く行かなかった。
「おまたせー…ってヒラ!?どうした、何で泣いてんだ!?」
「いや…うん…何でもない、よ。不安にさせたならごめん…」
「いや、大丈夫だけどよ…辛いことがあったら言えよ?」
キヨのせいでこの状況になっているのにそんな事が言えるなんて、俺には心情が理解出来ない。
「うん。キヨは優しいね…ありがとう…」
『この状況が辛いよ』なんて言えるはずが無かった。出来ればキヨを傷つけたくない。自分で言うのもなんだけどこんな環境でこんな考えをする俺も大概お人好しなのかもしれない。
「いやー、ラーヒーに褒められると照れるな!そんなとこも好きだぜ!さ、朝ごはん食わしてやるよ。あーん」
好きって言われてここまで無感情なのは初めてだ。嬉しくもないし、かと言って嫌悪感は抱かない。
というか平然と食べさせようとするのは作戦なのか?キヨなしじゃご飯も食べれないんだよ的な感じで俺を依存させたり…流石に考えすぎか…ここは素直に受け取っておこう。
「あ、あーん…」
スプーン一杯のヨーグルトで俺はお腹いっぱいになってしまった。最近体調がよくないからだろうか。
「ラーヒー少食だなぁ。痩せこけたら心配だから強制はしねぇけどちゃんと食えよ?」
「うん、わかったよ…」
普通に生活していた頃と同じように話して優しく接してくれるからこの状況を忘れて気を許しそうになる。
危ないと思いながらキヨの方をじっと見た。
俺は躊躇しながら一つの希望を問いた。
「ねぇ…キヨ?この鎖さ…外してくれないの…?」
「ラーヒーは外して欲しい?」
「うん、まぁ…痛いし、動きにくいかな…」
「そっか。逃げないって約束するなら外してやってもいいけど、どうする?」
「うん、約束する!だから外して…?」
これで少し逃げれるチャンスが得られるんじゃないか、そんな期待を込めて返事をした。自覚はないけど俺お得意のあざといって雰囲気を使って。
「よし!ラーヒーはいい子だもんなー。じゃ、外してやるよ。よっと」
ガチャリと音がして鎖が外された。うっすら痕が残ってるけどまぁ、時間が経てば消えるだろう。
どのみち隙が出来ればここから逃げ出す予定なのだ。もう一度鎖痕が出来るなんてことないだろう。
「ありがとう。キヨはこれから何をするの?」
「あー、実況撮ってラーヒーと過ごす?」
「へー…そうなんだ…」
俺には勝手に止めさせたのに自分はのうのうとゲームするんだね。身勝手なキヨ。君は何を考えてるの?
「そんな顔すんなって!ヒラは笑ってる顔が一番可愛いぜ!」
こんな顔をしてる原因が自分だって分かっててこんなことを言ってるのならサイコパスみたいだな。
俺は無理に口角を上げて応えた。
「うん、分かったよ。キヨの言う通り笑顔は大事だもんね」
「よしよし、やっぱ俺ヒラのこと好きだわー。素直に言うこと聞いてくれるし拒絶もしねぇし。何をしてても可愛いし」
頭を撫でた後、キヨは抱きついてきた。
今の会話のどこに可愛いという要素があったのか。
それに、頭を撫でられるだけならまだしも抱きつかれるのは流石にちょっと嫌だ。
「ありがとう…」
キヨは抱きついていて見えないと思うけど俺には笑顔なんて1つも浮かんで無かった。
逃げ出してやりたい。今すぐにでも。
でもこの家の出口を確認せずに動くのは少々危険な気もする。だから待つよ、その時まで。
見てて、キヨ。俺はここから逃げ出してやる。
決意を決めて自分の手の平を爪でぐっと押した。少し痛みを感じてそれが何故か少し心地がよかった。
「ヒラ!多分この後する事ねぇだろ?だから一緒にゲームしねぇ?俺さヒラと遊びたいんだよね」
その言葉にピクリと反応してしまう。もう出来ないかもと思っていたゲームがまた出来る?こんな状況だけどずっとゲームをしてたからもうそろそろ禁断症状が出そうだ…
「うん、するよ。俺もキヨとゲームしたいな」
ゲームしたいのは本心。でもキヨとはしたくなかった。監禁する前の状態ならよかったのになぁ。
「よっしゃ!じゃあすぐ行こうぜ!」
キヨは俺の手をぐいっと引っ張って行った。
『お願いだから、俺に触らないで。』その言葉を言う勇気は無かった。
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