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需要と供給?【1】 キヨヒラ
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こうなったのは高校2年の終わり。勉強する意味も生きている意味も分からなくなってたぐらいの時期。
死のうと思っていた。あの時。
ロープを買いに行くとかめんどくさいことは嫌だったし、電車に飛び込んで人に迷惑をかける死に方も嫌だった。
まぁ、死のうとしてる時点で迷惑云々とか言えたことじゃないんだけど。
結果、家にあった剃刀を手に取って手首に当てた。
でも、死ぬには少し勇気が足りなかった。僕も死にたい、死にたいなんて言って、まだ生きたいってことだったんだ。
でも、死ぬ勇気もなかった自分が情けなくなって何故か悔しくて、スっと線を引くくらいの力で剃刀を横に引いた。
案の定、手首には切れた線が残って傷口から血が滴り落ちた。
それから、僕はその行為に性的興奮を覚えるようになった。 おかしいと思うかな、普通なら。でも僕は普通じゃない。普通の人じゃなかった。だだそれだけだったんだ。
自分の身を切る感覚はなんとも心地いい。死にたいわけじゃなくなったから、そんなに強くは出来ないけとある程度なら許される。死んでしまってこの行動が出来なくなるのはなんとも惜しい。
日が経つにつれて「切りたい」という気持ちは大きくなっていった。体は年中傷だらけだ。夏場は隠すのがめんどくさくてしょうがなかった。
そう言えば、部位によっては深く切っても大丈夫なのでは?と思って深く切って床を殺人現場みたいにして母さんに怒られたこともあったなぁ。
そんな僕は今、最終兵器俺達のグループの一員としてまてゲーム実況者として生活している。今でも変わらない性的興奮への行動。
腕や足の見えやすいところにやることも増えた。冬場だけの話だけど。もちろん他人にはバレないように気をつけた。メンバーも然りだ。
ある日、自分の家で普通は行うその行為をなんとなくの気分で最俺ハウスでやりたくなった。見つかってしまうことに興奮は覚えない。ただ、本当に気まぐれだった。朝もの凄く早い時間に起きて暇だったから、ただそれだけ。
最俺ハウスのドアを開けて玄関の靴を見ても靴はない。人の気配もしない。そりゃそうだが一応確認だ。
慣れた手つきで床に人1人座れるくらいの大きさのビニールシートをひいた。床に血痕をつけるのは嫌だったから。
お気に入りのよく切れる剃刀をカバンから取り出して、一番最初にした時のことをふと思い出して手首に当てた。ある程度理解している力加減で剃刀を横に引いた。
ビニールの上に垂れていく血、その匂い、何よりじんじんと痛みだす傷。全てが僕を興奮させた。案の定勃起している僕のそれ。こんな状況は傍から見たらなんとも不思議な光景だろう。
痛みと興奮に浸っていると、ガチャと扉が開く音がした。
「まずい」この思いが頭に現れたのも束の間で後ろを振り返ると、メンバーのキヨが立っていた。
「あれ?ラーヒーじゃん。早くない?まぁ、俺もなんだけどwてか何してんの?床に座り込んで」
背を向けてるからバレてない?いや、そんなことはもはや問題じゃない。このままじゃバレて何を言われるか分からない。メンバーは抜けたくないな…とやんわりと覚悟を決めた。
キヨの近付いてくる足音。ひょいと僕の顔を見るために顔を覗かせた。
「は…ちょ、ラーヒー…お前手首、それ切れてんじゃん…何してんだよ…」
キヨは手首を掴んだ。キヨの手に血がついてしまった。
そんなことはお構い無しにと、キヨは傷口と僕の顔を交互に眺め始めた。混乱しているようにも、案外冷静なようにも見えた。
「あー…これ、ね…うん、ちょっと…うん、大丈夫だから。気にしないで、ね?それよりキヨの手、洗おう?床も片付けなきゃ。僕がやるからキヨは手洗ってきなよ」
「…」
キヨは黙ったまま、じっと傷口を見ていた。傷口から血が垂れている。肌をつたって床に落ちて行く。
キヨが手首付近の所を握っているからじんじんと痛む。それがまた僕を興奮させる。
勃起しているのが見られたら今度こそ心配せずに引かれてしまうんだろうなぁ…と考えているとキヨが小さな声で何か言った。
「…だ」
「キヨ?どうかしたの…?ねぇ…なんて言ったの?」
微動だにしないキヨ。聞き取れなかった僕はキヨに聞き返した。
「綺麗だ…」
「…え?今…なんて…」
「なぁ、ヒラ。お前綺麗だな。こんなに綺麗だなんて知らなかったわ…」
「キヨ、何を言って…」
「やばい、勃ってきた…」
見るとキヨのそれも勃起していた。
これが綺麗?尚且つ興奮するようなものにキヨはには見えているんだろう。もしかしたらキヨも…
「キヨも…普通じゃないの?」
「…バレた?」
それからとりあえず他のメンバーが来たらややこしいことになると思って片付けをした。
終わった後、キヨは話してくれた。自分が異常性癖を持っているってことも、いつから気付き始めたのか。
僕もそれに応えるように話をした。意気投合した僕達はいつも以上に話をした。盛り上がって話をし過ぎて、メンバーが来たのも気付かなかったくらい。
一通り話し終えた後、キヨはある提案をした。
「ヒラは切って興奮するんだろ?その気持ちは分かんねぇけど俺は血に興奮する。なぁ、これって凄いと思わねぇ?」
「何が?」
「だーかーら!どっちの性欲も満たす方法がこれなんだよ。ヒラは切ってるだけでいいから、俺に見せて?そしたら俺は傷口から流れる血で興奮できる。もちろん毎回見せろとは言わない。一週間に1回とか…どうよ?」
「ふーむ…」
見せる趣味はない。でも頻度は二日に1回だから、一週間に1回なら別に構わない。
「よし!それ乗った!キヨにしてはまともな提案じゃん?」
「だろ?俺、ずっと見せてくれる人探してたからさ。動画とかより臨場感あるし、尚且つ友達だから気兼ねないし。あー!まじこれからヒラから電話かかってくるのが楽しみすぎるわ!」
「キヨは大変だったんだね…僕は1人でも全然出来るからさ、比較的楽だったんだよね。まぁ、これからは
頼ってくれれば毎日じゃなかったら見せるよ?さすがに毎日はキツいけど…」
「マジで!?ラーヒー良い奴過ぎんだろ!もー、なんかそういうとこ好きだわー」
「わー、キヨに好かれて嬉しーい」
「棒読みがすぎるだろww」
まぁ、好きって言われて悪い気はしないよね。特別嬉しいわけじゃないけど。
そこから生活が始まった。1週間に1回キヨ見せて性欲を満たしてあげる。難しいことじゃなかったし、特に嫌悪感も抱かなかった。ただ友達の勃起してるところを見るのは中々体験出来ないことだなとは思った。
でも、むしろ僕も見られるということに興奮を覚えかけていて新しい扉を開いてしまいそうになっているんだから中々危ういのかもしれない。これ以上性癖が増えたら困りそうだ…
そんなこんなで気付けば約1年が経過していた。体は相変わらず第三者から見れば異常な程傷ついていた。キヨも自分から要求することも増えたし、頻度も高くなっていた。
でも、治そうなんて思わなかった。むしろ、治りかけの傷口をまた抉るというのがなんとも気持ちいいという事に最近気付いてからはどハマり中だ。
傷を抉るのだから血も出る。それを見ているキヨも満更でもなさそうだから別に構わないだろう。
「なぁ、ヒラ。明日行ける?」
「ん?行けるよー」
「じゃあ、明日な」
「了解ー」
キヨが僕にだけこの手の話を持ちかける時は傷つけるところを見せて欲しいということだ。
「なになに?実況の話?俺も行きたーい」
フジが僕とキヨの間に顔を割り込んで話に入る。
「ばーか、お前はダメに決まってんだろ。俺とラーヒーだけの話だよ」
「えー!ずるい!ていうか、4人で撮ろうよ。久しぶりにさ」
「あー、それいいな。俺も撮りたいわ」
フジとこーすけが4人で撮りたいと意見を出す。
そもそも実況の話じゃないんだけどねぇ…
「やめといたほうがいいと思うよー。二人とも多分引くよ?」
「えっ…何そんなグロい系のゲームすんの…?さすがサイコ組…」
「ふふっ…さあ?何するんだろうね」
「わお、意味深だー。じゃあ、まぁお二人でグロゲー楽しんでよ。俺はパス…」
「フジがダメなら俺もパスだな。最近二人とも距離近いし、邪魔しないようにするわ」
フジもこーすけもパスだと言う。
そういえば気になる。こーすけの言葉。別に距離が近いって思ったことないけど…そんなに近く見えるのかな?確かに会う頻度は多いけど距離は変わってない…と思う。
「ねぇ、こーすけ。僕とキヨ、そんなに距離近い?」
「何言ってんだよ!俺らがハウスに来た時キヨいっつもヒラ、明日いける?とか、ヒラ明後日は?とかヒラヒラヒラ!ずーっとヒラってうるさいくらいだぜ!?リア充か!」
こーすけの勢いに押されて僕の目はぱちくり開いて瞬きするのも忘れてたみたい。おかげで目がちょっと痛い。
「てか、ヒラ気づかないの?キヨずーっとヒラの隣に居るけど。陣取ってるって感じするねー」
フジが言う。ぱっと横を見ると確かにキヨは隣に居る。しかも、結構近いじゃないか。びっくりした。
成程、この関係こそ知られてないものの距離が近くなって勘づかれそうなのかもしれない。
少し距離を置くようにキヨに言ってみようかな?
いや、素直に受け過ぎて離れすぎたらそれもそれで不自然だ。うーん…難しいところだなぁ…
「何言ってんだよ、フジ。同じメンバーなんだから近いの当たり前だろ?陣取ってる気がするのはお前の気のせいだな。ヒラと俺はそんな関係じゃねぇよ、ばーか」
「最後のバカはいらなくない!?俺泣いちゃうよ?」
「泣けば?」
「冷たい!!」
キヨはフジの方へ行ってしまった。2人で騒いでる。
横を見てもさっき居た場所にキヨは居ない。当たり前だけど…少し寂しいのはなんでだろう。別にキヨがどうしようと僕には何の関係もないのに。
胸の辺りが少しチクってなるのは、皮膚を切るのとはまた違う感覚で新しい。
でも気持ち良くない。同じじゃないんだ、これは。
痛いだけならいらないのになぁ…邪魔なだけ。
「痛いなぁ…」
ボソッと呟いただけ。誰にも聞こえてない。分かってる、分かってるんだけど…キヨにだけは届いてくれないかな、なんて思ってしまう自分が居たことに酷く驚いた。
こんな性癖を持って、一生彼女なんか出来ない。生涯1人で暮らすんだと思ってた自分にとって神様の気まぐれか悪戯が知らないけど、キヨが現れたのは奇跡に近い。
ずっとそばにいて欲しい。横に居たい。
そんな思いが脳を走る。
笑えるよね。自分を傷つけることで興奮して、尚且つ同性愛者。どんだけ特殊性癖持ってんだよ。本当、僕って滑稽な存在だよ。
でも、もう今更。今更同性愛者って分かっても何の抵抗もない。それは多分僕が前からおかしかったから。
こんなおかしい思いも自分もゴミ箱に丸ごと投げ棄ててしまおうか?
いや、せめて思いだけは置いていこう。僕はどうなっても構わないけど生まれさせてしまったこの思いを棄てるのはあまりにも酷に思える。
告白…しようかな…
「ヒラー」
「っうえ!?どうしたの?…キヨ」
「声ヤバwぼーっとしてたから気になってさ」
「あぁ、うん。何でもないよ、ちょっと考え事してただけ」
「ふーん…あんま抱え込むなよ。お前そういう所あるから」
「…っうん」
優しくされるとダメだ。顔が赤くなる。
キヨ、ダメだよ。誰にでも優しくしちゃ。僕みたいに勘違いする子出てきちゃうよ?
「何かラーヒー顔赤くない?風邪?」
「…キヨのばーか」
「突然の暴言は傷つきますぜ?ラーヒーさんよぉ」
「ばーか…」
ばかなのは僕の方だ。いつまでもこのままじゃ、いけないのに。この関係性を保ちたいとも思ってる。
でもやるよ、僕は。告白してみせるさ。
一生に1度来るか来ないかのこの少女漫画みたいな思い。このままにはしたくないからね。
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