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☆信じてる こーヒラ
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フジと付き合って2年、同棲して3ヶ月
そろそろ疲れた
「ヒラ、どこ行くの?」
リビングを通って玄関へ続く廊下へ出ようとドアノブに手をかけていた。
「あ…えっとこーすけと実況撮ろうと思って」
「ふーん。何時に帰ってくるの?」
「ん、ちょっと分かんない…かな」
「帰って来る時はちゃんと連絡してね。遅くなったらダメだよ」
「うん、分かった…」
少し小走りで家を出た。
しんどいなぁ。
ふと思った。
付き合ってから1年と数ヶ月くらいからフジはあんな調子。いつも僕のことを気にかけてる。それは同棲してから更に酷くなってる。
誰と、どこで何をするのか言わないと絶対に家から出られない。フジが勝手に決めた約束だけど、フジはああ見えて結構怒ったら怖いタイプ。怒らせたくない。
だから、出来るだけ守るようにしてきた。
けどそろそろ疲れた。心配してくれたり気にかけてくれるのは嬉しい。愛されてる感じがして好きだ。
でも度が過ぎると言うか…だから今日僕は初めて約束を破ってみようと思う。
少しながらの反抗心が動いた時が実行の時だ。
こーすけと実況撮るのは嘘じゃない。だからそのまま泊まらせて貰おうと思う。そりゃあ…こーすけには迷惑かけるかもだけど、事情を話せば…ね。
あぁ、でも最俺内でギスギスしたらちょっとやだなぁ…こーすけやキヨとはずっと仲良くしていたいもん。
ううん。色々考えるのは後にしよう。今はこーすけの家に行こっと。遅れたら嫌だもんね。
「こーすけー。おはよう!」
「おー、おはよ。ヒラ。何撮る?」
「決めてなかったっけ?w」
「決めてなかったw」
「よし、今から決めよw」
うん、こーすけと居ると大分楽だ。気持ちがっていうか雰囲気が?仲のいい友達って感じで。
数時間撮ってダラダラした後泊めてもらえるか聞いてみた。
こーすけは優しいから快くOKしてくれた。理由は聞かれなかったけど、一応話しておいた。僕に何かあった時のためにも。あ、名前は一応伏せておきました。
やっぱギスギスはいたたまれないので…
「へー、ヒラの恋人ってそんな感じなんだな…いるとは聞いてたけどどんな奴かは知らなかったからなー」
「本当、なんかしんどくなってきちゃって…」
「そりゃあなるって。俺でもなる。また、しんどくなったら言えよ?何時でも泊めてやるから。気にせず頼れ!」
「うん、ありがとうー。こーすけ」
やっぱこーすけの安心感って言うか包容力凄い。お母さんみたい…
なんか今日は久しぶりによく眠れそう。いつもは横にいるフジの圧力が凄くてなんか嫌な汗かくんだよね…
「って、なんかさっきからめっちゃ携帯鳴ってるけど大丈夫か?」
「あー、うん…確実に恋人だからもう無視して寝よっかなって…」
「そうしろ、そうしろ。そいつはちょっと異常だな。愛が重い!たまには突き放してやるのもいいと思う」
「…だよね。こーすけ、ありがとう。おやすみ!」
「おやすみー」
そうして僕は久しぶりにいい気分で眠りについた。鳴り止まない携帯の音は無視して。耳にこびりつくように繰り返される着信音は聞かなかったことにして。
――――――――――――――――――――――――
「ん…う…んー、よく寝たー!こーすけおはよう!ってまだ寝てる。今何時だろ?」
携帯を取って確認すると時間を見るより先に恐ろしい程の数の着信履歴が入っていた。
「えっ…!なにこれ!怖い…」
思わず携帯を投げてしまった。慌てて取りに行った。
「大丈夫、壊れてない…それにしても気持ち悪い…」
着信履歴は100件。
電話して来たのは…フジだ。
分かってはいたけどここまでなんて…帰るのが怖い。怖くて仕方がない。
何を言われる?何をされる?
でも帰らないと…こーすけに迷惑がかかる…行き先を伝えて来たわけだからいつ押しかけて来てもおかしくない。
「迷惑かける前に帰らなきゃ…」
急いで帰り支度を済ませて出ていこうとした時。
「ヒラ?もう帰んの?」
こーすけが起きちゃった…
「こーすけ…うん、ちょっと急用思い出して。ごめん、起こしたよね?帰るね」
「ちょ、ちょっと待てって!顔色やばいけど、大丈夫か?休んで行くか?」
「っううん…だ、大丈夫だよ!心配しないで。それじゃあね」
ドアを開けて、外に出かけた僕は後ろを振り向いた。
「ねぇ、もし、もしだよ?僕が助けを求めたら助けてくれる?」
「当たり前だろ!友達だし!」
その言葉にどれだけ救われるか。
「ありがとう、こーすけ。バイバイ」
ドアから手を離した。よく晴れた日だった。僕の心とは裏腹にね。
重い、重い足取りでフジが待ってるであろう家に帰る。怖さと緊張でなんだか頭がおかしくなりそうだ。
鞄から鍵を取り出して玄関のドアを開ける。電気がついてないってことは起きてないってことかな…
取り敢えず音をたてないようにそっと廊下を歩いた。
リビングの玄関を開けて中を除くとソファに影が見える。フジだろうけど、寝てるのか?起きてるのか?分からない…
抜き足差し足で近付いて顔を覗き込んだ。瞼を閉じて、すーすーと寝息をたてていた。
いずれは話をしないといけないんだろうけど、今はほっと一息をついて自室に向かおうとしてフジに背を向けた時、腕をものすごい力で引っ張られた。
「ぅええ!?何、いたっ!」
「お・か・え・り。俺のヒラはこんな時間まで何してたの?」
「こーすけの家で泊まってたの…」
「約束したよね?遅くなったらダメって」
「した、け、ど…でも守らなきゃいけない訳じゃ…ないし」
「なんで?ヒラは俺のものでしょ?なんでそんなこと言うの?今まで守ってくれてたじゃん。急にどうして?」
「…俺はフジのものじゃない!俺は俺のものだよ。フジにとやかく言われる筋合いは無いはずだよ。それに、急にじゃないから。前から…だよ。少し前からうんざりしてた」
フジの言葉に反論した後、胸の内を伝えた。重すぎる愛は身を滅ぼすから。ここで止めておかなきゃいけないんだ。
「そ…こと…わない…」
「…え?フジ、何て行言ったの?」
「俺のヒラはそんなこと言わない!!俺のヒラは俺に優しくてずっと隣に居て愛し合ってて約束は守るいい子だ!お前は約束を守らない…だから俺のヒラじゃないんだ。愛なんてない別のヒラなんだ」
「何…言ってるの…?フジおかしいよ!ねぇ!目覚ましてよ!」
「うるっさい!俺を惑わすなよ、偽物」
訴えかけてもフジは話を聞かない。それどころかゆらりと立って台所に向かった。
「偽物を消さなきゃ…ヒラを取り戻さなきゃ…俺のヒラを」
ゆっくりした足取りで包丁をこちらに向けて向かってくる。
「ひっ…フジ!やめてよ!!やめて!」
「ヒラを返せよ。きっとお前を殺したらヒラは帰ってくる。きっとそうだ。戻ってきたら怖かったねってさすってあげなきゃ。俺の…ヒラ…」
もう俺の方をちらっとも見ていない。ううん、見えてない。
俺を偽物だと信じて疑わない。
怖くて足が動かない。どうしたらいいかも分からない。訴えかけても、もはや無駄だろう。
死を受け入れて目を閉じた。
「ヒラを返せよぉぉぉ!!!」
「…こーすけ…た…すけ…て…」
包丁が空気を切る音がする。あぁ、あれがもうすぐ俺に刺さるんだ。
「やめろ!!!」
死を覚悟していた。その時。
体を蹴り飛ばす音がした。
「っぐぁ!」
「ヒラ!大丈夫か!?無事か!?」
「…こーすけ…来てくれた…んだ…」
涙が自然と零れた。こーすけが来てくれたんだ。
「い…たいなぁ。あれ?こーすけ?どうしたの?」
「お前なぁ!どうしたじゃねぇだろ!」
「あっ、さてはこーすけがヒラを奪ったの?俺のヒラを。あはは、そいつと共犯なんだー。じゃあそいつと一緒に殺してあげるよ!ヒラを取り戻すためなら何でもするからね。待っててね、ヒラ!」
走ってこっちに向かってくるフジ。その目はもう正気じゃなかった。
「うるっせぇよ!目覚ませよ!いい加減!!ヒラはここに居るだろ!」
こーすけが強い蹴りを一発入れた。それがちょうどフジのお腹にヒットしたのか、フジは倒れて動かなくなった。
「はぁ…はぁ…フジ…どうしちゃったんだよ…」
取り敢えずフジがまた変なことしないように縛っておいた。目を覚ますまでどれくらいかかるか分からないから一息つくことにした。
「こーすけ…本当に…来てくれたんだ…」
「当たり前だろ。言っただろ?ヒラが助けを求めてたら助けに行くって」
「っ…うん…うん…!ありがと…あり…がとう…」
「ほら、泣いていいから。何でも受け止めるから」
こーすけにハグされたまま小一時間泣いていた。安心感とまだ抜け切れない恐怖感が襲ってきて涙が止まらなかった。
「こーすけ…っは何でここが…分かっ…たの?」
「あー…キモいかもしれないけど後付けたんだよ。ヒラの状態がなんて言うか…やばかったから、心配になって。それでフジの家についたから暫くドアの側にいたら中から叫び声するから心配になって…」
「…ううん!キモくなんかない!だってこーすけのおかげで助かったんだから…本当にありがとう…!」
「当然だろ!だってお前は俺の…いや、やめとこ…」
「えっ、なに?なんなの…?怖いんだけど!」
「いや、今言えることじゃないからさ。気にすんな」
「やだやだ、教えて!逆に気になるもん…!」
「…悲しむと思う」
「俺が?」
「あぁ。それでもいいって言うのか?」
「…うん。今こーすけが言いたかったことなんでしょ?知りたいな…」
「…分かった。俺はヒラのことが好きだ。この場で言うことじゃないって分かってるけど…ずっと好きだった。でも付き合って幸せそうにしてるヒラに…言えなかった。でも今俺が思うのはこの記憶を消してやりたい、というか塗り替えてやりたい。ヒラは…どう思う?」
「俺は…こーすけの気持ちすっごく嬉しい。助けてくれた時かっこいいって思ったし、付き合いたいって思うけど…フジのことをきっぱり忘れられるのかなって心配なんだ…未練がましく忘れられないかもしれない…そんな俺でもいいの…?」
「どんなヒラでも好きなんだよ。あー…なんか照れくさい!言わせんなよ!」
「こーすけのくせに…ドキッとさせないでよね/////」
照れくさくて笑って茶化してしまった。中々…素直になれないのかも…?
「ヒラが笑ってくれるのは嬉しいけどこいつどうする?」
「全然起きないね…でもあんまり顔見たくない、かな…怖くなっちゃうから…」
「そりゃあそうだろ。分かってる。取り敢えず起きたら最俺会議だな」
結局起きたフジとキヨを集めて最俺会議を開いた。
フジは最俺を辞めたくないらしい。俺も出来ればこのまま皆で一緒にいたいっていう気持ちはある。
でも、あんなことがあったから怖くなっちゃって…どうしようかってなったから暫くフジとは絡まないと言うことになった。4人で集まるのはもう少し先になりそうだ。
そして、こーすけと俺はお付き合いし始めて同棲もしてる。
こーすけがフジみたいにならないか心配してしまう気持ちはあるけど…こーすけの事を信じてるから大丈夫なような、そんな気がするんだ。
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