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俺はふらふらと、外に出た。
あの時の大雨は、すぐに通り過ぎ、
俺の心に強い雨を降らせた。
いま降る雨も、止むことを知らないみたいに降りしきる。
だけどそれも、台風が去るまで。
この雨もまた、俺にどしゃ降りを置いていくのだろう。
俺は傘を持って歩きだす。
あの時あいつに置き去られた、傘。
思ったよりも風が強くて、
ばたばたと傘を叩く雨粒はかなり大きいらしい。
まるで、共鳴するみたいに俺の心がざわめく。
一緒に歩いた雨の日は、
こんなにも冷たい風だったのか。
こんなにも冷えた雨粒だったのか。
俺はこんな気持ちで、あいつと雨の中を歩いたことはない。
あぁ、会いたい。
強く、そう思った。
その瞬間に、曲がり角から現れるひとつの傘。
すぐに分かった。
傘の中にいるのは愛しいあいつだということ
そして、
一人じゃないということも。
風に揺さぶられる傘が、ばたばたと暴れる。
スローモーションのようにゆっくりと、
2人は俺の横を、通り過ぎて。
頭の中は真っ白。
力が抜けて傘が手から離れた。
スローモーションのようにゆっくりと、
舞い上がる俺の、傘。
あの日置き去られた傘
俺にとっては最後の繋がり
(あいつにとってはもう用済み、)
何度も何度も、思い描いた再会
だけど運命は残酷だ。
どしゃ降り
ど しゃ 降 り
ど し ゃ 降 り 。
この雨の冷たさが罰だというのなら、
この愚かな俺を、どうか流れ消して下さい。
できることならこの傘と一緒に、
跡形もなく、流れ消して下さい。
おわり。
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